赤外線調査

12条点検(定期報告制度)とは?建物全体を調査する必要はある?

投稿日:2021年9月22日 更新日:

東京・足立区を拠点に、日本全国対応にてドローンソリューションサービスを提供しているドローンフロンティアです。

今回は、お客様からもお問い合わせの多い「12条点検(定期報告制度)」について、詳しく解説していきます。
建築物には、法令によって定められた定期点検を行う義務があり、この点検は建築基準法第12条に定められているため、一般的に12条点検と呼ばれています。

この12条点検(定期報告制度)について、どこまでが対象範囲なのか、対象となる建物はどのようなものかをご紹介していきます。

当記事は一級建築士佐藤氏監修です

株式会社佐藤マンションサポート 代表取締役 佐藤稔氏(一級建築士)

 

 

 

 

 

1995年 東京理科大学工学部二部建築学科卒
在学中、日中は準大手ゼネコンにて現場管理に勤しむ
卒業後、マンション維持保全を生業とする老舗の設計事務所に勤務
2017年 同業他社設計事務所にて、代表取締役に就任
2020年 マンション管理士事務所『佐藤マンションサポート』 創業
2021年3月 一級建築士事務所登録
4月 株式会社佐藤マンションサポート設立(4月9日の大安吉日)

【追記 2022/1/31】
令和4年1月18日の官報にて、建築基準法施行規則の一部が改正されることが報じられ、建築物の定期調査報告における調査方法の一つとして、ドローン(無人航空機)による赤外線調査が明記されました。
建築基準法施行規則の改正内容についてはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:建築基準法改正 ドローンによる赤外線調査が明文化

12条点検(定期報告制度)が義務化された背景

平成20年に行われた建築基準法の改正で定期点検が義務化され、検査基準が厳格に定められました。

これまでの建築基準法では、定期点検の際に異常があったとしても”建築物の所有者等に注意喚起”することが定められていたのみで必ずしも修理・補修が行われていた訳ではありませんでした。

12条点検が義務化された背景としては、上記のような整備・メンテナンス不足によって死亡者を伴う甚大な事故が多発したことが影響しているといわれています。

平成18年 エレベーターによる死亡事故(東京都)
平成19年エレベーター機械室の発煙事故(東京都)
平成19年ジェットコースター死亡事故(大阪府)
平成19年広告看板落下による負傷事故(東京都)

いずれも定期点検が適切に行われていなかったことが事故につながった原因として指摘されました。
これらの事故を受け、定期点検の項目が厳格化されました。

外壁の点検についても同様で、これまで手が届く範囲の打診だけでよかったものが、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある外壁の全面打診が義務化されました。

 

12条点検(定期報告制度)とは?

「12条点検(定期報告制度)」は、国が定めた建築基準法第12条に基づいて行われるものです。

建築基準法12条第1項

第十二条 第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国、都道府県及び建築主事を置く市町村が所有し、又は管理する建築物(以下この項及び第三項において「国等の建築物」という。)を除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物(同号に掲げる建築物その他政令で定める建築物をいう。以下この条において同じ。)で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物を除く。)の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(次項及び次条第三項において「建築物調査員」という。)にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の建築設備及び防火戸その他の政令で定める防火設備(以下「建築設備等」という。)についての第三項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

12条点検は、政令や特定行政庁が定める特定建築物の所有者・管理者に義務付けられています。
定期的に、一級建築士など決められた資格を持つ人が建築物や建築設備の調査を行い、その調査や検査の結果を所管の特定行政庁に報告しなければなりません。

12条点検の概要

12条点検が義務付けられている特定建築物とは、おもにデパートやホテル、病院といった不特定多数の人が利用する施設になります。
こうした施設は、構造自体が老朽化したり、避難設備に不備があったりした場合、大きな事故や災害につながりかねません。
そのため、法令によって事故や災害を未然に防ぐ目的で、専門の資格を有する調査員が建築物を定期的に調査、検査を行い、所管の特定行政庁に報告するよう義務付けられています。

12条点検に必要な資格

12条点検を行える資格を持つ人は、以下のとおりです。

・一級建築士
・二級建築士
・講習を受講して資格を得た検査資格者

一級建築士と二級建築士は、特別な手続きが不要で特定建築物調査、建築設備検査、防火設備検査、昇降機等検査を行えます。

検査資格者は、上記の検査に特化した講習を行い、受講して資格を得ると、それぞれ特定建築物調査員、建築設備調査員、昇降機等検査員として検査を行えるようになります。

12条点検の対象となる建物はエリアによって異なる

定期報告対象建築物は都道府県によって異なります。
例えばマンション一つとっても対象となる条件(平米数・階数)は全く異なりますし、中にはマンションが定期報告の対象外というケースもあります。
マンションの定期報告対象の条件を首都圏で比較してみましょう。

【東京都】マンション:5階以上かつ床面積1000㎡以上の建物

【埼玉県】マンション:6階以上の建物

【神奈川県、千葉県】マンション:定期報告対象外

神奈川県、千葉県ではサービス付き高齢者向け住宅以外の集合住宅は12条点検の対象ではありません。
ご自身が所有するマンションが定期報告の対象となるのかどうか事前に確認しておきましょう。

 

12条点検の対象範囲は?

12条点検の対象には範囲があり、その範囲に基づいて調査、検査が行われることになります。
それでは、ここでは12条点検の対象範囲について詳しく見ていきましょう。

「全面打診」の範囲

12条点検の定期報告自体は、建築物の用途に応じて1~3年の周期で行う必要があります。
その中で、約10年周期で「全面打診」を行う必要があります。
たとえば、2年周期で点検を行っているのであれば、5回目に全面打診の調査報告を行わなければなりません。

その際、打診調査と同等の手法として赤外線調査が認められているのですが、調査範囲については「落下により歩行者などに危害を加えるおそれのある部分」と定められています。
これは、たとえば不特定多数の人が往来する公道沿いであるとか、敷地内でも居住者の往来する部分の直下になる面だけで良いということになります。

建物の東西南北、すべての面で調査を行うと費用もそれなりにかかるので、「全部やりましょう」という業者も少なくありません。
ドローンフロンティアでは、その制度自体を正しく把握しており、報告に必要な部分だけの調査であれば、だいぶ費用を抑えることができます。

歩行者に危害を与える恐れのない部分

建築物の調査範囲において「歩行者に危害を与えるおそれのない部分」とは、おもに以下のような箇所になります。

・庇があるなど落下物が歩行者に当たらない箇所
・調査範囲内に植え込みがあるなど落下物が歩行者に当たらない箇所

このような場所は12条点検の調査範囲にならないため、こうした場所を省くことで調査範囲を1/3程度にまで縮小できます。

 

12条点検の対象となる建物は?

冒頭で、12条点検の調査対象となる建物について触れましたが、これは国が指定したもので、さらに特定行政庁(地方自治体)が独自に指定している建物もあります。

おもに学校やマンションなどの集合住宅、オフィスビルなどが当たりますが、特定行政庁によっては一般居住者のみのマンションやオフィスビルは定期報告の義務がないというケースもあります。

たとえば、関東の1都2県でいえば、東京都と埼玉県はマンション、オフィスビルは調査の対象となりますが、神奈川県と千葉県は対象外です。

このように、調査対象がマンションやオフィスビルの場合、所管の特定行政庁によって報告義務の有無がありますので、確認しておくとよいでしょう。
ただ、ビルの管理会社でも、こういった細かい調査対象の範囲を把握していないことが多いのが実際のところです。

ドローンフロンティアでは、12条点検の調査範囲の傾向についてまとめております。
ビルオーナー様や管理会社のご担当者様に、調べるための閲覧や、調査そのものについてご相談にお応えしておりますので、お気軽にご相談ください!

12条点検の調査結果の判定基準

定期調査の結果、是正の必要の要否の判定基準が3段階で定められています。

指摘なし:要重点点検及び要是正に該当しないものです。

要重点点検:次回に行う調査までに「要是正」の状態になる可能性が高い箇所が要重点点検に該当します。定期点検以外でも日常的に状態を把握し要是正の状態に至った場合は対応しなくてはいけません。

要是正:補修・修理が必要な状態です。速やかな是正の対応が求められ、場合によっては特定行政庁による是正状況の報告聴取が行われ、対応していない箇所については是正命令を受けることになります。

 

12条点検の流れと費用の目安は?

12条点検を行う対象の建物について、点検の流れと費用の目安について解説していきます。
12条点検の流れについては、以下のとおりです。

1.建物外壁の調査
外壁タイルなどに亀裂、浮きなどがないか。地盤沈下が起こっていないか。雨水の排出は正しく行われているか。

2.屋上部分の調査
防水仕上げ材に不具合は起きていないか。漏水、雨漏りの要因となる劣化が起きていないか。

3.建物内部の調査
防火上の区画、不燃性能が必要な仕上げ材に劣化が生じていないか。建築設備に不具合が生じていないか。

4.避難設備の調査
バルコニーや階段などに設置された避難設備の操作に妨げが生じていないか。避難経路の確保ができているか。

また、12条点検の費用に関しては、基本的に建物の形状や植え込みの状態によって調査範囲が大きく変わるため、一概に金額を出すのが難しいといえます。

ドローンフロンティアでは、ドローンを利用した赤外線調査を行う場合、1,000平米以内で30万円程度というのが目安となります。
同じ規模の建物で、打診調査によって12条点検を行った場合、足場を組むなど低く見積もっても100万円は超えるため、ドローンを利用したほうが大きく費用を抑えることができます。

しかも、ドローンによる赤外線調査では、窓の部分を調査する必要がないため、これを省いて算出します。
建物の外壁で窓面積が占める割合は40%にも上るケースもあるため、調査費用はそのぶん下がります。

12条点検を怠るとどうなる?

12条点検が義務化された中、点検を怠ると建築基準法第101条により100万円以下の罰金の処されます。それ以上に、マンション・ビルの外壁タイルの剥落による事故リスクは大きく、毎年死亡事故が発生しております。
以下は外壁タイルの落下事故件数です。(カッコ内は被害者数)
毎年発生しているどころか事故件数は上昇の一途を辿っています。

2014年6件(1)
2015年3件(1)
2016年6件(9)
2017年5件(1)
2018年8件(1)
2019年12件(7)

外壁タイルのメンテナンス不足による痛ましい事故を増やさないためにも、計画的な点検・劣化部分の補修を行なっていきましょう。

ドローンによる12条点検の報告書のクオリティはいかに?

12条点検の外壁調査をドローンで行う場合の報告書の精度はどうなのか、気になりますよね。
弊社の外壁調査報告書のサンプルを公開いたします。

こちらは調査概況です。
12条点検を行った当日の気象条件や、調査・解析項目を詳細に記載しております。

こちらが調査結果です。
可視光カメラによる調査結果と赤外線カメラによる調査結果を記載しております。
可視光カメラはエフロレッセンスの発生状況、シーリングの劣化状況、タイルのひび割れを調査し、
赤外線カメラでは主にタイルの浮きを調査します。

こちらが可視光カメラによる調査結果です。
引きの画像と寄りの画像を撮影することで、どの個所の劣化なのか、またどのように劣化しているのかをお伝えいたします。

こちらは赤外線カメラによる調査結果です。
タイルが浮いていると疑われる箇所のを可視光カメラ同様、引きと寄りの画像でお伝えします。

12条点検の外壁調査報告書の一部を紹介させていただきました。
劣化箇所の状況が一目でお分かりいただけるよう丁寧な報告書をご提出します。

弊社は赤外線カメラによる撮影だけでなく、報告書作成のための分析まで一貫して自社で行っております。建築物の構造や劣化要因を理解した上で外壁調査の撮影・分析まで行えるパイロットが多数所属していることが弊社の強みです。

12条点検なら、ドローンによる赤外線調査を得意とするドローンフロンティアにお任せください。

今回は12条点検(定期報告制度)についてご説明してきました。
点検費用もさることながら、そもそも12条点検の定期報告が必要かどうか、判断が難しい方もおられるかと思います。

ドローンフロンティアには、12条点検の報告書作成資格を持つスタッフが揃っており、打診調査よりも費用を大きく抑えることができるドローンによる赤外線調査に数多くの実績があります。

ドローンによる赤外線調査で12条点検をお考えの方は、ぜひお気軽にドローンフロンティアまでご相談ください。

 

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