マンションの外壁は雨や風、雪、夏の暑さや冬の寒さから居住空間を守る、という役割があります。また、外壁に貼られているタイルやサイディングは外観を美しく見せるだけではありません。マンションの躯体の安全性や耐久性を高めています。それだけに外壁タイルやサイディングを貼り付ける施工は適切な方法で行わなければなりません。また、外壁の安全性を維持するため、関係機関へ報告が義務づけられている定期的な調査の実施を徹底する必要があります。万が一、外壁の劣化現象で発生する「浮き」でタイルやサイディングが剥がれ落ちて、居住者や歩行者に怪我させるようなことは防がなければなりません。そのためには「浮き」の原因を知っておく必要があります。
外壁材はどんなものがある?
外壁の「浮き」についての原因を知る前に外壁材について、知っておきましょう。マンションなどの外壁で一般的に使われるのはタイル、モルタル、サイディング、ALCなどです。それぞれどんな特性があるのかを見ていきます。
高級感あふれる外壁材がタイル
さまざまな外壁材の中で高級感をだすために利用されるのがタイルです。タイルは石や土といったものを高温で焼き固めて作られたもの。耐候性に加え、高い強度と吸水性が少なく、経年変化が発生しにくいという特徴があります。現在、マンションの外壁で最も利用されているのがタイルです。
強い耐火性と仕上がりが美しいモルタル
モルタルはセメントと砂、水を混ぜ、塗り固めるものです。強い耐火性があるほか、継ぎ目がないため、仕上がりを美しくすることができます。最近はマンション外壁にタイルを利用する場合の下地材としての利用されることが一般的になっています。
工期が短く、メンテナンスも容易なサイディング
サイディングはセメントを原料にした窯業系、金属系、木質系、樹脂系があり、主流になっているのはセメントに木材のような繊維質の素材を混ぜ、板状に成形したもの(窯業系サイディング)です。低層マンションで使われるケースがあります。
タワーマンションの外壁で見られるALC
軽量かつ高い強度、そして断熱性、耐火性を持つ外壁パネルが軽量気泡コンクリートでできたALCです。タワーマンションの外壁で利用されることが多い外壁材です。パネルには補強材が組み込まれています。
外壁の劣化現象の「浮き」とは
外壁の劣化現象でよく見られるのが「浮き」です。浮きは文字通り、外壁が膨らんでしまうことです。その原因は「経年劣化」や「施工不良」。「浮き」はタイル、モルタル、サイディング、ALCパネル、いずれの外壁材でも起こりうるものです。
特にマンションなどでもっとも多く利用されている外壁タイルで発生する「浮き」は、剥離、落下で、死傷事故が発生したこともあるため、最も注意すべき劣化現象だといえるでしょう。外壁に浮きが発生している場合、建物の安全性が損なわれているため、早急な修繕が必要となります。
また、タイル、乾式工法によるものを除く石貼り、モルタルなどの劣化や損傷の定期点検と報告は、特定建築物に指定されているマンションは法律によって必要となっており、怠ると100万円以下の罰金となる場合があります。
経年劣化が原因となる外壁の浮き
雨や風、冬には雪、夏の強い太陽など、外壁は日常的に厳しい自然環境と対峙しています。そのため、経年劣化を避けることはできません。躯体コンクリート、下地のモルタル、張り付けに利用されるモルタル、そしてタイルと、構成材ごとの界面における接着力の低下で、タイルは剥がれてしまいます。また高温多湿気候の日本ではそれぞれの素材が膨張・収縮を繰り返し、それが浮きにつながることがあります。さらには地震による建物の揺れで歪みが発生し、浮きを起こす場合もあります。
外壁の浮きは施工不良が原因の場合も
外壁工事が決められた手法・手順通りに行われていなかった場合、施工不良が発生します。施工不良は次のようなパターンが見られます。
- タイルを貼る際の圧着力不足による浮き
- モルタルにタイルを貼り付けるまでの時間が長かったための接着力不足による浮き
- モルタルを塗りつける躯体コンクリート表面の汚れによる浮き
- 躯体コンクリート表面の目荒らし不足による浮き
このほかにもモルタルの塗り不足や不正確な位置へのタイル貼り付けなどが施工不良となります。
外壁浮きの原因が施工不良かどうかの判断は?
外壁の浮きが経年劣化によるものなのか、施工不良によるものなのか、の正確な判断は困難です。しかし、浮き率によってある程度の判断は可能といわれています。
外壁タイルの浮き、剥落に関して、2018年2月14日、大阪地方裁判所で裁判が行われましたが、その際に判決を下した裁判官は法曹界の専門誌である判例タイムズの2017年9月号に、湿式工法による外壁タイルの施工不良の判定目安を提案されています。
この判定目安に利用されたのが、「浮き率」でした。
- 5年以内 0%以上
- 5年超10年以内 3%以上
- 10年超15年以内 5%以上
- 15年超20年以内 10%以上
浮き率は外壁タイル全体の面積に対して、どれだけの部分が浮いてしまっているかを示す指標数値であり、パーセンテージで表示します。施工後の期間ごとに、上記の浮き率の数値が上回った場合は施工不良の可能性があります。
マンションの外壁は常に厳しい自然環境にさらされています。そのため、劣化スピードが早い場合もあるので、この目安の通りだから即座に施工不良だとは言い切れません。しかし、ある程度の推察は可能となるのではないでしょうか。
外壁の浮き、その調査方法は?
外壁の浮きは目視や打診のほか、最近ではドローンによる赤外線調査で行われています。打診は打診棒と呼ばれる専用工具や特殊なハンマーでタイルを叩き、その音や感触で浮きの状態を把握するという方法で、これまで広く普及してきた検査方法です。しかし、この方法は検査を行う作業者に高いスキルが要求されます。また高所作業となるため、足場の設置に手間とコストがかかっていました。
一方、最近、普及しているドローンを使った赤外線外壁調査は建物から放出される赤外線エネルギーからサーモグラフィーでタイルの状態を検査します。この調査方法であれば、タイルの浮き以外にも、雨漏りや漏水といった問題も推定することができます。
ドローンによる赤外線外壁調査は2022年(令和4年)1月18日付けで「平成20年国土交通省告示第282号」が一部改正され、打診以外の調査方法として、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を持つとして明文化されています。
外壁の浮きはドローンで調査が可能
日中に実施する調査の場合、外壁タイルやモルタルに浮きができると隙間の空気が温められるため、正常な状態の壁面と比較すると高い温度分布を示します。ドローンを利用した赤外線外壁調査はこの対象物の温度差を利用します。ドローンによる赤外線外壁調査は日照が十分な環境で、かつ赤外線に関する豊富な知見と経験、ノウハウ、正しい手法による撮影によって、高い信頼性を持った外壁調査を行うことが可能になります。
ドローン赤外線外壁調査にはスキルやノウハウが必要
調査員によるドローンの操縦技術だけでなく、赤外線診断の経験、ノウハウによって、解析結果には差が出るのはいうまでもありません。ドローン赤外線診断士のような国家資格もありません。そのため、正確なデータと調査結果を出すためには、いうまでもなく、調査会社・調査員に相応の経験やノウハウ、スキルが必要です。
マンションの法定点検、ご相談はドローンフロンティアへ
私どもドローンフロンティアには総飛行時間1,000時間以上のパイロットが所属しているだけでなく、全国でドローンの飛行許可を取得しています。ドローン飛行禁止区域が多い都心部の住宅でもドローンでマンションや建物の外壁調査・点検を行うことができます。また、診断にあたっては赤外線建物診断技能師の資格保有者が行いますので、より正確な解析結果や調査・報告をだせます。ドローンだけで調査が足りない場合、建設業界やロープアクセス調査会社とも密接に連携しているので、打診調査を組み合わせることが可能です。マンションをはじめとする特殊建築物の法定点検については私どもドローンフロンティアにご相談ください。