ドローンの登場によってマンションやオフィスビル、工場など、建築物の外壁をはじめるとする各部の点検調査は格段に進歩を遂げたといえるでしょう。これまで建築物の点検では調査する部分が広範囲かつ高所にまで及ぶため、その実施には、足場を組み、熟練の作業員が打診ハンマーなどの工具を利用して、タイルなどの状態を確認するといった方法で行われていました。しかし、赤外線装置を搭載したドローンを利用して実施する点検方法が開発され、その技術が確立、普及してきたことから点検の期間は短縮化し、人手も少なくて済むようになりました。それにともなって、費用も、打診で行う方法と比較して安くなっています。
ドローンによる外壁の点検、内容と方法は?
ドローンによる点検はこれまでも一般的な家屋の屋根や、マンションやオフィスビル、工場といった建物の外壁など、さまざまな場所で行われてきました。また橋梁や道路、鉄道といった公共インフラの点検といった分野でも利用が拡大しています。ドローンが調査に利用される主な例を見ていきましょう。
一戸建て住宅の屋根をドローンで調査
これまで一戸建て住宅の屋根の調査は足場を組んだり、あるいは梯子をかけたりして、作業員が屋根に登り、確認していました。しかし、作業員が転落するリスクがあるほか、屋根の強度が落ちていた場合や目視ではわからない状態の破損などに乗ってしまった場合、誤って屋根を壊してしまう恐れがあります。そこで点検作業にドローンを利用した調査が行われるようになっています。実際に屋根に登って打診などを行う作業と比較して、コスト、調査期間の短縮が実現しています。
オフィスビルやマンション、工場の外壁調査・点検にドローンを利用
オフィスビルやマンション、工場の外壁調査・点検にドローンを利用する事例が増えてきています。赤外線検査装置を搭載したドローンを利用し、温度変化を画像処理することで、外壁タイルの浮き状況や漏水や雨漏りの状態の点検が行われています。
ドローンで12条点検の報告書作成用調査も可能に
「建築基準法第12条」、に基づく点検、いわゆる「12条法定点検」で義務化されている定期報告のための建築物状況調査でも利用されています。2022年1月18日付けの「平成20年国土交通省告示第282号」では12条点検における打診以外の調査方法として、ドローンによる赤外線調査がテストハンマーによる打診と同等以上の精度があるものとして明確化されたことから、12条点検の定期報告書作成用の調査でもドローンの利用が進んでいます。
太陽光発電パネルの点検もドローンで
環境負荷の低減による再生可能エネルギー(再エネ)の活用や再エネの固定価格買取制度(FIT)の施行で、家屋の屋根、ビルやマンション、工場の屋上、壁面に太陽光発電のパネル設置が増えています。正常に発電しているかどうかの確認作業はドローンを利用して行うことができます。ドローンに搭載した光学カメラで目視確認を行い、赤外線検査装置が撮影した画像から温度異常のパネルがあるかどうかをみることで、不具合の点検が可能です。
ドローンによる点検のメリットとデメリット
ドローンによる点検はさまざまなメリットがあります。しかし、万能ではないので、デメリットもあるのはいうまでもありません。それぞれ見ていきましょう。
ドローン点検のメリット
ドローンを使った点検は足場を設置する必要がないので、打診による点検が困難な場所でもドローンであれば点検が可能になるほか、機材費や人件費を抑えることが可能になるといったメリットがあります。点検の期間も最短で半日程度。また、打診は作業者の経験やノウハウ、知見に頼らなければならないのですが、ドローンによる点検の場合は赤外線が撮影したデータの分析となるため、作業者の感覚という曖昧な診断ではなく、データを基にした客観的な診断が可能になります。
利用者側だけではなく、事業者側にもメリットがあります。点検作業者が高所に行く必要がないため、転落事故などの危険なリスクを回避できるというメリットもあるでしょう。
ドローン点検のデメリット
一方、ドローンによる点検は天候によって左右されるという点がデメリットだといえるでしょう。大雨や強風といった悪天候下ではドローンを飛ばすことができません。地球温暖化の影響から天候の急変による急な大雨という現象も増えてきています。突然の天候悪化でスケジュール変更が余儀なくされる場合もあるでしょう。また、ドローンによる点検では異変を発見したときに応急処置を行えないのもデメリットとして挙げられます。飛行禁止区域の問題もあります。弊社ドローンフロンティアでは全国で飛行許可を取得しているのですが、それでも航空法などの関係でドローンの飛行を禁止している区域もあり、どこでもドローンで点検できるというわけではありません。
ドローンによる点検費用の目安
ドローンによる点検は従来の打診による点検と比較して費用を安く済ませることが可能です。従来の、足場やゴンドラといった仮設設備を設置して行う打診点検の際には設置費用だけでも数百万円以上かかります。マンションの場合、大規模修繕の時期と同じなれば仮設設備が必要となるため、そこでコストを盛り込めるのですが、法定点検で外壁点検を行わなければならない場合にはそこまで都合よく、点検時期を合わせるわけにはいかないのがほとんどです。
ドローンフロンティアが実施した際の点検費用例
ドローンによる点検を依頼する業者にもよりますが、一つの目安としていただくため、これまで弊社ドローンフロンティアで実施してきた金額例をご紹介いたします。
1. マンション 136戸 調査面積3500㎡ 130万円(1㎡あたり約372円)
2. 9階建てビジネスホテル 調査面積1000㎡ 45万円(1㎡あたり450円)
3. 老人ホーム 100戸以上 調査面積7000㎡ 175万円(1㎡あたり250円)
この金額は調査撮影・画像解析報告書の作成にかかる費用です。これに別途弊社スタッフの移動交通費がかかります。弊社の場合、調査面積によって1㎡あたりの価格は変動します。また、飛行申請の有無、さらには点検を行う建築物に対する飛行難度などによっても価格は異なってきます。
「9階建てビジネスホテル」の事例をもう少し詳細に見ていきましょう。このビジネスホテルでの点検の目的は12条定期報告のためでした。調査の手法はドローンのみ。期間は1日間で、人員は3名体制でした。必ずしもこの規模であれば、この金額・単価とならない場合もありますが、ドローンによる外壁調査を行う際のおおよその費用感などをご理解いただけるのではないでしょうか。
ドローンによる点検で費用のコストダウンは可能?
ドローンを利用した点検を行う場合、弊社の場合には1㎡あたりの撮影および画像解析費用となっています。点検対象となる物件の規模や調査範囲、さらにはドローンだけを使う調査なのか、あるいはロープアクセス調査や地上打診調査と組み合わせる調査になるのか、などによって異なりますが、弊社の事例で照らし合わせると、従来の足場を利用した全面打診調査などとの比較では、トータルで3分の1から10分の1程度までコストダウンできる場合があります。
ドローンによる建物の点検、ご相談はドローンフロンティアへ
ドローンによる調査技術が大幅に向上し、その精度は法的にも打診調査と同等以上と明確化されたことから、建物の点検をドローンで、あるいは12条に基づく定期点検をドローンで、また、大規模修繕に向けて事前に調査をドローンで行っておきたい、そういったニーズが高まっています。私どもドローンフロンティアには総飛行時間1,000時間以上のパイロットが所属しているだけでなく、全国でドローンの飛行許可を取得しているため、ドローン飛行禁止区域が多い都心部の建築物でもドローンで点検を行うことが可能です。ドローンによる点検については弊社ドローンフロンティアにご相談ください。