ドローンは建設業のみなさんにとってなくてはならない、欠かせないものになってきています。測量、工程・施工管理から点検・調査など、ドローンの利活用で建築現場における作業・業務の効率化や高精度化が進んでいます。作業員の安全性向上や建設業に従事する人材不足もドローンの導入で解消できる場合があります。ドローンの導入、利活用に際しては補助金や助成金の利用で、コストを下げることが可能です。
国土交通省の取り組みi-Constructionでカギとなるドローン
建設業の人手不足は深刻な状況にあるといえます。日本経済新聞は2024年5月23日付けで「ビル建て替え延期相次ぐ 建設業界、人手不足と資材高で」という記事で国内建設受注額が過去20年間で最高額となっているにもかかわらず、資材高と人手不足で今後は受注量の減少が見込まれ、この活況を呈している建設需要に応えられなければ、都市計画に影響が出る、と危機感を報道しました。
建設現場における人手不足の解消に向けて、国はさまざまな施策を打ち出してきました。建設業のDX化もその一つ。国土交通省が2016年度から推し進めている「i-Construction(アイ・コンストラクション)」はICTの全面的な活用など施策を建設現場に導入することによって、来年度までに現場の生産性20%アップを目標にしています。そのカギとなっているのがドローンです。
建設業のドローン導入は補助金、助成金で
建設現場における測量や検査、点検など、さまざまな場面で利用されるドローンは高性能であり、その導入には当然のことながらコストがかかります。また、ドローンを利用する業務を内製化する場合、ドローンの調達だけでなく、ドローン導入後も定期的なメンテナンスや点検が必要となるほか、パイロットの育成にもコストが発生します。
そのため、ドローンの導入で人手不足の解消による業務効率の向上、事業の拡大につながるとは理解していてもハードルがあると感じている中小規模の建設業事業者の方々は少なくありません。しかし、みなさんがドローン導入を行う場合には国や地方自治体の補助金や助成金を活用することができます。
ものづくり補助金が給付された事例には赤外線カメラを使った外壁調査など
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は「生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する補助金です。今年受け付けていた分については2024年3月に締め切りとなっています。
ものづくり補助金の対象事業者となるのは、建設業では資本金3億円以下、常勤従業員300人以下の中小企業および個人事業主を含む小規模事業者。受け取ることができる最大金額は750万円から1,250万円となっています。補助率は2分の1ですが、小規模事業者の場合は3分の2となります。
これまでに建設業のドローン導入で補助金が給付された中には次のような事例がありました。
- レーザーシステム搭載ドローンによる高精度測量の実施と作業効率化
- ドローンと赤外線カメラによる大~小規模建物の外壁診断サービス開発
- ドローンを活用した非破壊の建物高所箇所診断サービス
- ドローンによる安全性・生産性を高める設備保全点検の革新的サービスの実現
- 遠赤外線カメラ搭載ドローンと独自診断ノウハウを活用した建物外壁診断方式の確立
- ドローンを用いた、3D測量技術を応用したインフラ構造物への対応技術サービス
ここに紹介したように建設業が建築物の測量・点検・管理の効率化や、作業者の安全性の向上といった事業展開、業務改善などの用途でドローンの導入を検討する場合、ものづくり補助金の申請が通れば、初期コストを抑えることができます。
事業再構築補助金では12条点検の調査業務で給付された事例あり
事業再構築補助金は新型コロナウイルスの影響を受けた事業者が、新分野展開や業態転換、事業・業種転換などの取り組みを通じて、事業を再構築することを支援する制度です。こちらも今年の募集は締め切られています。
この補助金の対象となるのは日本国内に本社を有する中小企業者および中堅企業などで、建設業の場合、資本金3億円、常勤従業員が300人以下。補助金額は、申請する枠や企業規模によって異なりましたが、通常枠の場合、中小企業は補助率が3分の2で100万円から8,000万円、中堅企業の場合、補助率が2分の1で100万円から1億円となっています。
これまでに建設業のドローン導入でこの補助金が給付された中には次のような事例がありました。
- 赤外線カメラ搭載したドローンを建築基準法第12条の定期点検や中古物件の調査業務に活用。
- 建設機械レンタル事業とドローン調査事業による事業再構築。
- ドローンを導入して建物点検診断サービスを取り入れ、既存顧客への新規提案。
- ハイスペックドローンとカメラで建物外壁タイルなどの浮きを赤外線カメラで撮影し、解析する赤外線調査。
- ドローンによる太陽光発電システムの発電不良検知、故障原因特定およびパネルの汚れ洗浄のメンテナンスサービス。
- ドローン技術を新たに取り入れ、既存の土木建築技術を生かして空撮測量、赤外線を使った点検業務。
この事業再構築補助金についてはここに紹介したような事例のような、建設業が建築物の測量・点検・管理の効率化や、作業者の安全性の向上といった事業展開、業務改善などの用途でドローンの導入を検討する場合、申請するチャンスがあるといえるでしょう。
補助金申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要
なおこのものづくり補助金や事業再構築補助金の申請には事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。GビズIDは、法人・個人事業主向け共通認証システムであり、GビズIDを取得すると、一つのID・パスワードで、複数の行政サービスにログインすることができます。アカウントは最初に1つ取得するだけで、有効期限、年度更新は必要ありません。いつ募集が行われても良いようにGビズIDプライムアカウントを取得しておいた方がよいでしょう。
地方自治体による建設業向け補助金もドローン導入に利用できる?
建設業を営まれているみなさまがドローンを導入する際、地方自治体による補助金が利用できる可能性もあります。現在、申請を受け付けているものでは秋田県の「建設DX加速化事業費補助金」などがあります。補助金の対象となるのは秋田県内に主な営業所があり、秋田県の建設工事入札参加資格者名簿に登載されている事業者など。導入機器の中に「UAV」とありますが、これがドローンになります。応募締め切りは2025年1月31までとなっています。
中小企業省力化投資補助金は今後の改訂に期待
また、「中小企業省力化投資補助金」は今後の改訂に期待されるものです。この補助金は中小企業の売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT・ロボットなどの人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援するというものです。補助金の申請案内サイトに掲載されている「製品カタログ」から選択・導入することになります。今年度からスタートしたこの制度ですが、製品カタログが4月に公開され、これまでに何度か改訂が行われています。
現時点でドローンは掲載されていませんが、岸田総理は5月30日、総理大臣官邸で開催された国内投資拡大のための官民連携フォーラムで次のように発言されています。
設備投資の基盤となる建設業については、本日の経済界の皆さんからの御指摘を踏まえ、経産省と国交省が連携して、カタログに建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)関係の製品も追加し、支援していくよう、両大臣におかれては取組を進めてください。
出典:首相官邸ウエブサイト
岸田総理の指示もあったことなので、今後のカタログ改訂でドローンや関連製品が入ってくる可能性があり、期待したいところです。
ドローンパイロット育成にも利用可能な補助金や助成金
自社内にドローンパイロットを育成し、ドローンを活用していきたいと考えている事業者のみなさんが利用できる可能性があるのは厚生労働省の助成金「人材開発支援助成金」です。
事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です”
出典:厚生労働省 人材開発支援助成金
この助成金はドローンパイロットを育成するスクールの受講費用に利用することができるものです。
また、愛知県豊橋市では2024年4月から、「無人航空機操縦者資格取得支援補助金」で、市内に事業所がある中小事業者を対象に、従業員がドローン国家資格の取得するに当たって国土交通省登録講習機関の講習を受講した場合、登録講習機関における講習費用の一部を補助する制度をスタートしています。
IT導入補助金も申請可能
このほかに利用できる可能性があるものとしては「令和5年度補正予算 サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」があります。中小企業・小規模事業者などの労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDXなどに向けたソフトウェア、サービスといった ITツールの導入を支援するための補助金です。
補助の対象となる建設業は個人も含まれ、資本金・従業員規模が3億円以下、従業員が300人以下となっています。IT導入補助金の対象となるのは、あらかじめIT導入補助金事務局に登録されているITツールのみとなっているので注意が必要です。
ドローンフロンティアのスクールは補助金・助成金対象になることも
弊社ドローンフロンティアはドローンを利用した建築物の外壁調査や点検事業を行っているほか、ドローンパイロットを育成するドローンスクール、UAS技能教習所(東京校)などを運営しております。このスクールでは屋根点検や赤外線外壁調査などを行えるような技術を学べる「産業技能コース」や初級の国家資格である無人航空機操縦士の資格取得を目指す「国家資格取得コース」などのコースがあり、受講者の方々からご好評をいただいております。
建設業を営んでおられるお客さまから、自社でドローンパイロットを育成したい、弊社のこうしたドローンスクールの各コース受講費用について、補助金や助成金が使えないかと、ご相談をいただくことは少なくありません。弊社で行っているプログラムは国や地方自治体の補助金や助成金が使える可能性が高く、これまでにも事例がございます。補助金や助成金を活用しての受講を検討されているのであれば、弊社窓口にご相談ください。
ドローンフロンティアはドローンのトータルサービスを提供
ドローンフロンティアはドローンを利活用した建築物の調査・点検のほか、スクール事業や導入に向けてのコンサルティングなどを行っています。建設業をはじめとして様々な産業・ビジネス分野におけるドローンの導入に関する助言、ドローン販売、ドローン操縦士の育成、さらにはドローン導入後の継続的なアフターサポートなど、ドローン導入を進める際に直面する課題を解決するトータルサービスを提供しています。