今年8月10日夜、福岡市博多区の通称「大博通り」の歩道に面したマンションの10階から外壁の一部が歩道に落下したという事故が発生し、落下物が周辺に散らばっている様子がTBSなどのニュースで報道されました。事故発生当時、連絡を受けた消防車5台が駆け付け、外壁がさらに剥がれ落ちないよう、隊員がブルーシートなどで応急措置が行われました。幸い怪我人などは出なかったものの、人や物に当たるようなことがあれば、大きな惨事になったかもしれません。マンションの外壁やタイルが剥落してしまわぬよう、定期的な調査・点検が必要です。
発生してしまったタイルの剥落事故
タイルは、石や粘土といった無機質を1,000℃以上の高温で焼き固め、成形した素材です。耐久性、対傷性、耐火性、耐水性に優れているという特徴があります。建物の外壁にタイルを貼り付ける施工することによって、外壁が雨風、日差し、紫外線で受ける影響を抑制し、マンションの躯体を劣化から守るという役割を果たしています。外壁を美しく彩り、重厚感や高級感を与えるだけではありません。しかし、外壁タイルは頑丈でも、経年変化で発生する浮きという現象は完全になくすことはできません。そして浮きは剥落事故につながります。
点検・報告制度義務化のきっかけとなった北九州での剥落事故
国土交通省は2008年、当時多発していた外壁のタイル剥落事故を重くみて、それまでの「定期報告制度」を改訂しました。外壁タイル打診検査報告の義務化です。制度の見直しを行うきっかけとなったのは1989年11月21日に北九州市小倉北区昭和町で発生したタイル剥落事故。10階建ての住宅都市整備公団昭和町団地の最上階付近から、縦5メートル、横8.5メートルにわたって厚さ約3センチメートルのモルタルごと、外壁のタイルが剥落したのです。
約31メートル下に剥落したタイルは下を通りかかった通行人に当たり、男性1人、女性2人が死傷されました。またタイルは下で客待ちしていたタクシーにも当り、車両のフロンドガラスが割れ、運転手も右足に軽いけがをされました。割れた破片は大きいもので約20センチメートル四方、重さ4.5キログラムあったのです。
老朽化、劣化から起きるタイル剥落事故は最近でも
2019年5月、横浜市の横浜市健康福祉総合センターで外壁タイルの一部、縦6センチメートル・横22センチメートル・厚さ2センチメートル、1枚当たり重さ530グラムのものが2枚、剥落した事故を横浜市が発表していました。建物敷地内に駐車中し、施設を利用されていた方の車が破損する事故が発生。事故の発表当時、管理されている市では原因は経年劣化と推測されていました。怪我人がいなかったのは幸いでした。
また、最近では2023年12月に兵庫県豊岡市岩井の但馬空港でターミナルビルの多目的ホール入り口の外壁タイルが剥落するという事故が発生したことを神戸新聞が報道しています。この崩落事故では横約23センチメートル・縦7センチメートル・厚さ1.5センチメートルのタイルが、幅約4メートル、高さ2メートルにわたって崩落してしまいました。この事故でも幸い怪我人はいませんでした。報道によると、ビルの管理会社は老朽化が原因と推測しています。
剥落事故要因のひとつ、タイル浮きはなぜ起きる?
外壁のタイルが剥落してしまう原因のひとつが経年変化現象の「浮き」です。文字通りタイルが貼り付けられた外壁から「浮いてくる」ということです。「浮き」は経年劣化の現象ですが、施工不良によって発生する場合もあります。
経年変化で発生するタイル浮き
このタイルの浮きという現象は躯体コンクリート、下地モルタル、さらには張り付けに利用されるモルタル、そしてタイルという、外壁を構成する材料ごとに、それぞれの接着力が低下してくることや、これらの材料が夏に直射日光や高い気温、冬に低い気温、また、多くの雨や湿度などによって、膨張・収縮を繰り返してしまうことで発生します。「浮き」は外壁材がタイル、モルタル、サイディング、ALCパネル、いずれの場合でも起こりうるものです。
施工不良で浮きが発生するのは
タイルを外壁材に貼り付ける際、圧着力不足だったり、モルタルを塗りつける躯体コンクリート表面が汚れていたにもかかわらずそのまま貼り付けてしまったりすると、施工不良となって浮きが発生しやすくなります。また、モルタルで貼り付けるまでの時間が長かったために接着力が落ちてしまっているにもかかわらず、そのままタイルを貼り付けてしまったり、躯体コンクリート表面の目荒らしが不足している状態で貼り付けてしまったり、といった場合などでも同様です。モルタルの塗り不足や不正確な位置にタイルを貼り付けた場合にも施工不良となってしまい、浮きが発生してきます。
気候変動によって劣化スピードが加速
地球温暖化が進んでいるため、気候が変動してきており、その影響で台風は年々巨大化しています。線状降水帯も発生しやすくなっています。建物の外壁に貼り付けられたタイルは常に厳しい環境に直面しているといっても過言ではありません。
また、8月8日には日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生。この地震の発生で、南海トラフ地震の想定震源域で、大規模地震発生する可能性が高まっていると考えられ、巨大地震を注意喚起する南海トラフ地震臨時情報が発表されました。
台風の強烈な風雨、地震による建物の揺れは外壁タイルに衝撃を与えることになり、劣化のスピードを加速させてしまうことはいうまでもありません。
タイル剥落事故の賠償責任はオーナーや管理者に
タイルによる剥落事故で怪我人などが出た場合、その賠償責任は建物のオーナーや管理者、管理組合などになってしまうケースがあります。民法717条「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う」とあります。ここでいう工作物は「建築物」が含まれます。タイルが剥落する事故で怪我をされる人が出たり、あるいは他人の器物を破損させてしまったりするようなことがあれば、建物のオーナーや管理者、管理組合などが責任を問われるということです。
定期報告の対象となっている建築物の外壁タイルは、6ヶ月から3年以内に手が届く範囲内の打診を行い、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分を、打診もしくは赤外線装置を搭載したドローンで全面的な点検を行い、特定行政庁へ報告することが義務づけられています。
しかし、定期報告対象外の建築物であっても、剥落による事故を未然に防ぐため、外壁タイルの定期的な全面点検の実施を検討しましょう。
また、台風が来たあとや、震度が大きい地震が来たあとなどには、外壁タイルに目視だけではわからない劣化が発生している可能性があります。定期点検時期外であったとしても、安全性を確認するため、外壁前面の打診調査やドローン調査の実施を検討した方がよいでしょう。
タイル剥落事故を防止するための点検はドローンフロンティアへ
建物の外壁タイルの全面点検、そのコストは高く、時間がかかると思われている方が少なくありません。しかし、赤外線装置を搭載したドローンを利用すれば、打診と同様かそれ以上の精度による点検が可能になります。このドローン点検の精度は2022年の法改正で確認されています。
巨大な台風や震度が大きい地震などで目に見えない劣化が進んでしまったかどうかを確認するにはドローンによる点検をご検討ください。ドローンによる点検は調査コストを抑え、最短1日で点検を完了することができます。タイル剥落事故を防止するための点検をご検討の際は私どもドローンフロンティアにご相談ください。