不特定多数が利用する場合や、特定用途を含む場合のオフィスに使われているビルや店舗や飲食店を含むテナントが入っているビル、ホテルや宿泊施設、学校や病院が入居しているビル、集会施設や劇場などが入居しているビルは特定建築物に該当する可能性があります。特定建築物は定期的な打診やドローン等による外壁調査と定期報告が必要です。この調査・報告を怠ると、ビルの安全性が損なわれるだけでなく、100万円以下の罰金を課せられることがあるため、ビルのオーナーや管理者は注意をしなければなりません。そうした中、コストダウンや調査期間の短縮といった観点からビルなどの特定建築物の外壁調査では赤外線カメラを搭載したドローンの利用が進んでいます。
特定建築物とは?
「特定建築物」と呼ばれる建物は建築基準法第12条に基づき、安全性や適法性を確保するために定期調査と報告が求められている一定規模以上の建築物を指します。この「一定規模以上」というのは、高さや延床面積などの規模、建物の用途に応じて具体的に定められています。所有されている、あるいは管理されているビルが特定建築物に当たるかどうかはビルの所在地の特定行政庁に確認を取ることができます。
特定行政庁とは?
特定行政庁は建築物の安全性や適法性を管理・監督する権限を持つ行政機関であり、横浜市、大阪市などのような一部の大都市や指定された市の場合、市が直接、特定行政庁の役割を果たします。一方、特定行政庁が指定されていない市町村では、都道府県がその役割を担います。東京都の場合、23区内では各区の区長が特定行政庁として、23区以外の地域では八王子市、立川市、武蔵野市などの指定市では、市長が特定行政庁となります。また、奥多摩町、伊豆諸島のようなその他の市町村は東京都知事が特定行政庁を兼ねています。
外壁調査・報告が必要となるビルの具体例
特定建築物となるビルは不特定多数の人が一度に利用する劇場や映画館、百貨店、ホテル、病院、学校、遊技場などを用途としている建物です。また、高さや延べ面積が一定以上のものとなります。
特定建築物の一例を挙げると、高崎市の場合は次のような条件に当てはまるビルなどの建物が対象となります。
劇場、映画館又は演芸場 次のいずれかに該当するもの
地階>100平方メートル又は3階以上>100平方メートル
客席部分の床面積≧200平方メートル
主階が1階にないもの
観覧場(屋外観覧場を除く)、公会堂又は集会場
地階>100平方メートル又は3階以上>100平方メートル
客席部分の床面積≧200平方メートル
病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、就寝用福祉施設
地階>100平方メートル又は3階以上>100平方メートル
2階部分の床面積≧300平方メートル
旅館又はホテル
地階>100平方メートル又は3階以上>100平方メートル
2階部分の床面積≧300平方メートル
博物館、美術館、図書館、体育館(学校に附属するものを除く)、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場
3階以上>100平方メートル
床面積≧2,000平方メートル
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店又は物品販売業を営む店舗
地階>100平方メートル又は3階以上>100平方メートル
2階部分の床面積≧500平方メートル
床面積≧3,000平方メートル
出典:高崎市「特定建築物の定期調査報告(建築基準法第12条第1項)について」
また東京都が対象としている特定建築物は下記URLから確認することができます。
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku/chousa-houkoku/pdf/ch_2_01.pdf
東京都都市整備局「定期調査・検査報告制度」
特定建築物となるビルの具体的な基準や詳細は、建築基準法施行令や各自治体の条例によって異なる場合があるため、所有されている、管理されているビルが特定建築物に当たるかどうかは所在地に応じた規定を確認する必要があります。
特定建築物となるビルの外壁調査・報告
不特定多数の方が利用する特定建築物となっているビルについては、外壁の老朽化などによって、外壁タイルが剥落し、事故が発生する恐れがあります。
外壁の落下事故を未然に防ぎ、建築物の安全性や適法性を確保するため、建築基準法第12条第1項で「特定建築物」となっているビルなどを調査の対象として、定期的な報告が必要と定めています。特定建築物となっているビルのオーナーや管理者は、ビルの使用開始後の劣化や損傷、維持保全状況などを、一級建築士、二級建築士、または特定建築物調査員に調査してもらい、その結果を定期的に特定行政庁に報告する必要があります。
調査対象となるビルの外壁は?
モルタルで仕上げたビルの外壁や、モルタルで仕上げた壁にタイルを貼り付けているビルの外壁、天然石や人造石を貼り付けているビルの外壁が調査対象となります。調査はひび割れや剥離の有無、浮きや変形の有無、接着や固定の状態といった内容について実施されます。
1年から3年ごとの目視および手が届く範囲での部分打診
建築基準法第12条に基づき、1年から3年ごとに外壁全体を確認し、ひび割れや剥離の兆候、劣化箇所をチェックする目視点検、外壁タイルやモルタル仕上げ部分について、劣化や浮きの有無を確認し、打診棒やテストハンマーを使用して、手が届く範囲での部分打診が義務付けられています。この点検は建築士や外壁調査の専門資格者などの専門家に依頼することが推奨されています。
10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診
建築基準法12条では1年から3年ごとの定期検査に加えて、10年に一度、打診や赤外線カメラを搭載したドローンによって落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な外壁調査・報告が義務付けられています。
また、1年から3年ごとの定期検査で目視や部分的な打診の結果異常が確認された場合にも、打診や赤外線カメラを搭載したドローンによる全面的な調査が必要になります。
全面的な打診やドローンによる調査が免除になる場合も
特定建築物の外壁調査が免除になることもあります。東京都の場合、新築や改築後には直近の特定建築物調査年度の調査が免除されます。また、10年を超えたビルの最初の定期報告で、3年以内に外壁の改修工事が確定している場合には、調査・報告が免除されます。
ドローンはビルの外壁調査に使えます
外壁の全面調査にはテストハンマーなどを利用した打診を行うか、あるいは赤外線カメラを搭載したドローンが撮影した画像を利用して行うか、いずれかの方法を使うこと、となっています。ドローンを使った外壁調査は、ビル外壁の劣化状況や損傷している場所を効率的かつ安全に調査することができます。
ドローン利用で行われるビル外壁調査
ドローンを利用したビル外壁調査は撮影した画像データによって、タイルの浮きや剥離、モルタルのひび割れといった外壁の劣化状態や、防水性能の低下の兆候となる外壁塗装の剥がれや変色、外壁材やパネルの固定状態、隙間や腐食があるかどうかといった接合部の状態などを確認することができます。
また赤外線カメラによる撮影画像は外壁の表面における温度の違いを可視化できます。外壁タイルやモルタルに浮きができている場合、下地の間に空洞が発生します。空洞があると内部に熱が伝わりづらくなるため、表面が高温になります。それによって正常な部分と浮きがある部分で温度の違いが生じるため、浮きを推定することができます。
テストハンマーなどを使った打診によるビル外壁調査は調査員の熟練度や経験に依るところが大きく、判断について後から精査することは困難です。しかし、ドローンによる赤外線調査では可視化された調査データを得ることができるため、判断について後からでも精査することができます。
ドローンによるビル外壁調査の特徴
ドローンを利用したビル外壁調査には次のような特徴があります。
- 高所で作業者が直接的に調査しないため、落下事故のリスクがなくなる。
- 足場を組んだり、ゴンドラや高所作業車を使ったり、といった事前準備の必要がなく、準備時間の大幅な短縮が可能。またコストも削減できる。
- 高解像度カメラや赤外線カメラを利用して行うため、調査記録をデジタル化し、保存・共有することが可能。
- 短期間で詳細な調査を実施することが可能。
ビルの外壁調査はドローンフロンティアへ
建築基準法12条に定められている義務からだけではなく、地域社会を構成するインフラとしてビルの安全性は確立されている必要があるのではないでしょうか。そのため、所有、あるいは管理されているビルが特定建築物に該当している、していないに関わらず、定期的な外壁調査を行うことをおすすめいたします。ドローンによるビルの外壁調査はコスト、調査期間を削減できるだけでなく、より精度の高い調査を行うことが可能です。ドローンフロンティアはビルの外壁調査を通じて、安全な街づくり、社会づくりに貢献していきます。ドローンによるビルの外壁調査をご検討の際にはドローンフロンティアにご相談ください。