赤外線調査

特定建築物定期報告とは?制度内容・法的義務から外壁調査(ドローン活用)まで解説

投稿日:2025年5月8日 更新日:

特定建築物定期報告は、建築基準法第12条に基づき一定規模以上の建築物に対して義務付けられた、定期的な調査・報告制度です。ビルなどの安全性・適法性を維持することを目的とした制度で、建物の所有者または管理者が専門資格者による定期調査を実施し、その結果を所轄の特定行政庁(自治体の建築主事がいる行政庁)へ報告しなければなりません。建築基準法の定期報告制度には「特定建築物」「建築設備」「防火設備」「昇降機等」の4種類があり、この特定建築物定期報告はそのうち不特定多数の人が利用する一定規模以上の建築物(劇場、百貨店、ホテル、病院、学校、遊技場など)を対象としたものです。いわゆる“大勢の人が集まる建物”が該当し、各用途ごとに階数や延べ面積など具体的な基準が定められています。「12条点検」とも呼ばれるこの制度により、建物を使用開始した後も適法かつ安全な状態を維持する仕組みが構築されているのです。

特定建築物定期報告を怠った場合のリスク

特定建築物定期報告は法律上の義務であり、対象建物の所有者・管理者がこれを怠ると建築基準法違反となります。実際、建築基準法第101条では定期報告をしなかった者に100万円以下の罰金を科す旨が規定されており、報告未実施は厳しい罰則の対象です。また、報告を怠ったまま建物の不具合や事故(例えば外壁の落下事故や設備の故障火災など)が発生した場合、所有者は被害に対する損害賠償責任を問われるリスクも高まります。建物の安全確保と法令遵守の観点から、特定建築物定期報告は確実に実施することが重要です。

特定建築物定期報告と外壁調査の関係

特定建築物定期報告では建物全体の劣化状況や設備の状態、不適切な改造の有無など多岐にわたる項目を調査しますが、中でも外壁の点検は重要なポイントです。外壁の老朽化によってタイルやモルタル片が剥落し、通行人等に危害を及ぼす事故を未然に防ぐため、特定建築物となる建物では外壁の劣化状況を定期的に調査して報告することが求められています。調査対象となるのは、モルタル仕上げの壁やタイル貼り・石貼りの壁など剥落の恐れがある外壁で、ひび割れ・剥離の有無、浮きや変形の有無、部材の接着・固定の状態などを確認します。

外壁の定期点検は建築基準法の規定によりおおむね1年から3年ごとに実施することとされています。専門家による目視で外壁全面をチェックし、劣化やひび割れの兆候を観察するとともに、打診棒やテストハンマーを用いて手が届く範囲の外壁タイル・モルタル部分を部分打診して浮きの有無を確かめます。さらに10年に一度は、歩行者等に落下事故を及ぼす恐れのある外壁について全面的な外壁調査を行い、その結果を報告することが義務付けられています。この全面調査では、従来は調査員による全面打診(外壁全箇所を叩いて異常音を探す方法)を行ってきましたが、令和4年の法改正により赤外線カメラ搭載ドローンによる調査も正式に認められています。なお、1~3年ごとの定期点検で異常が確認された場合には、その時点で追加の全面打診またはドローン調査を行う必要があります。

こうした外壁の全面打診(またはドローン調査)については、新築や大規模改修後間もない時期など調査が一時的に免除されるケースもあります。例えば東京都では、新築または改築後には直近の定期報告年度における外壁調査が免除されるほか、築10年超で最初の定期報告となる年において今後3年以内に外壁改修工事を実施することが決まっている場合には、その周期の外壁調査・報告が免除されます。このように各自治体で細かな運用の違いはあるものの、基本的には定期報告制度の中で外壁の安全性確認が重視されている点は共通しています。

特定建築物定期報告の外壁点検方法:従来手法と最新ドローン活用

外壁調査の従来手法では、調査員が足場やゴンドラ、高所作業車などを設置して外壁に接近し、目視および打音(ハンマー等で叩いた音の変化)によって外壁の状態を確認する必要がありました。高層建物になるほど調査範囲も広大で、この方法は多大な手間と費用を要するうえ、調査員が高所で作業することから墜落事故など安全面のリスクも伴います。

こうした背景から近年注目されているのが、ドローン(無人航空機)を活用した外壁調査です。ドローンに高解像度カメラや赤外線カメラを搭載し、外壁表面の画像や温度データを取得することで、地上から遠隔で外壁の劣化状況を詳しく点検できるようになりました。ドローンで撮影した画像データからは、外壁タイルの浮き・剥離やモルタルのひび割れ、塗装の剥がれ・変色、外壁材パネルの固定状態、部材間の隙間や腐食の有無といった劣化症状を確認することが可能です。特に赤外線カメラによる画像では外壁表面の温度分布を可視化できます。タイルやモルタル下地に浮き(空洞)が生じている場合、下地との間に空隙があるため内部に熱が伝わりにくく、その部分の表面温度が周囲より高くなる傾向があります。正常な部分との温度差が生じることで浮きの疑いがある箇所を効率的に洗い出すことができ、広い外壁面の中から劣化の兆候を見逃さずに発見できるのです。

また、打診調査が調査員の経験や勘に頼る部分が大きくリアルタイムでしか判断できないのに対し、ドローンによる赤外線調査では可視化されたデータとして記録が残るため、後からでも客観的に分析・検証できる強みがあります。総じて、ドローンを活用した外壁調査には次のようなメリットがあります。

  • 調査員が高所で作業しないため、転落事故のリスクがなくなり安全性が向上する
  • 足場やゴンドラ、高所作業車などの大掛かりな仮設や準備が不要で、準備期間の短縮とコスト削減が可能になる
  • 高解像度写真や赤外線画像による調査記録をデジタルデータ化して保存・共有でき、後日の比較や第三者による検証も容易になる
  • 短時間で広範囲を詳細に調査でき、調査効率が飛躍的に向上する

このようにドローンを用いた外壁点検は、従来の方法に比べ安全かつ効率的で精度の高い調査を実現します。国土交通省もガイドラインを通じてドローン赤外線外壁調査の活用を推進しており、今後ますます普及が期待される最新の調査手法と言えるでしょう。

ビルの外壁調査はドローンフロンティアにお任せください

建物の維持管理は法的義務であると同時に、建物を所有・管理する者の社会的責任でもあります。特定建築物に該当するかどうかに関わらず、定期的に建物外壁の健全性を点検し、劣化箇所を早期に発見・補修していくことが重要です。ドローンを活用した外壁調査であれば、従来よりも短い工期と低コストで、安全かつ精度の高い点検が可能になります。

弊社ドローンフロンティアでは、赤外線カメラ搭載ドローンによる外壁調査サービスを提供しており、ビルやマンションの外壁定期点検を通じて安全な街づくりに貢献しています。コストダウンや調査期間の短縮を図りつつ、高品質な外壁診断を実施いたします。ビル・マンション等の外壁調査をご検討の際は、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。

-赤外線調査
-, , ,

関連記事

大規模修繕でドローンを活用|どこまで調査できるのか?

東京・足立区を拠点に日本全国対応にて本物のドローンソリューションサービスを提供しているドローンフロンティアです。 弊社ではドローンを活用した赤外線外壁点検調査を、建築基準法に則って実施しております。 …

東京都での特定建築物定期調査なら実績豊富なドローンフロンティアへ!

国は特定建築物を対象に建築基準法の第12条で定めた「特定建築物定期調査」、いわゆる「12条点検」を義務付けています。特定建築物となるのは一定規模の学校、児童福祉施設、商業施設、オフィスビル、旅館・ホテ …

建物点検のためのドローン撮影を外注するメリットと注意点

建物の外壁や屋根の点検は、建物の安全性を維持し劣化を早期に発見するために欠かせない作業です。従来、このような建物調査は足場を組んだり高所作業車を用いたりして人力で行われてきました。しかし、高所での作業 …

学校が外壁調査を実施するメリットは?コスト削減に繋がる外壁調査の基本を解説!

小学校や中学校、高校のように大勢の生徒が在籍する「学校」はその用途に使用している部分の床面積の合計が100平方メートルを超える場合、建築基準法第12条で1年から3年ごとの特定建築物定期調査と10年ごと …

外壁タイルの浮きが発生する原因は?知っておくべきメンテナンスの必要性

外壁タイルは様々な方法で施工され外観の美しさや防音防寒を担う機能を果たしてくれます。 では、外壁タイルにメンテナンスが必要か考えたことはあるでしょうか。 外壁タイルのメンテナンスを怠ると、タイルの浮き …