赤外線調査

建物点検のためのドローン撮影を外注するメリットと注意点

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建物の外壁や屋根の点検は、建物の安全性を維持し劣化を早期に発見するために欠かせない作業です。従来、このような建物調査は足場を組んだり高所作業車を用いたりして人力で行われてきました。しかし、高所での作業には転落などの危険が伴い、調査に長い期間と大きなコストがかかるという課題がありました。近年、こうした課題を解決する手段としてドローンを活用した点検が注目されています。ドローンによる空撮を用いれば、人が立ち入れない場所の状況も安全に把握でき、効率的に広範囲を調査することが可能です。また、専門のドローン調査会社に撮影を外注することで、より確実かつスムーズに点検業務を進めることができます。

以下では、ドローンを使った建物点検を外部の専門業者に依頼することによるメリットと、その際に留意すべきポイントについて具体的に解説します。

ドローン活用で変わる外壁・屋根調査の意義

ビルやマンションなど高所を含む建物の外壁や屋根の点検では、従来は熟練の作業員が打診棒や双眼鏡を使って目視でチェックしたり、必要に応じて外壁を叩いて内部の浮きを確認したりしていました。しかし、外壁全面を人力で調査しようとすると、大規模な足場やゴンドラを設置して作業員が高所に上る必要があり、調査完了までに数週間から1ヶ月程度の長期間を要する場合もありました。さらに、その間は足場設置による景観の悪化や建物利用者への影響も避けられませんでした。点検そのものの費用に加えて足場設置・撤去の費用も発生するため、建物所有者にとって負担が大きいのが現状でした。

こうした状況で登場したのがドローン(小型無人航空機)による建物点検です。ドローンに高性能カメラや赤外線カメラを搭載し、建物外観を空中から撮影することで、従来は人手でしか確認できなかった箇所も非接触で安全に調査できるようになりました。上空や建物側面からの撮影によって、屋根の破損箇所や外壁のひび割れ、タイルの浮き、塗装の剥離などの劣化症状を効率よく発見できます。特に、地上からは見えにくい高層階部分でもドローンであれば間近に寄って高精細な画像を取得できるため、細かな劣化も見逃しにくくなります。加えて、赤外線カメラを用いれば、目視では分からない外壁内部の雨水侵入や断熱材の劣化なども温度の分布から把握でき、早期に異常を検知することが可能です。

また、日本では一定規模以上の建築物に対して定期的な外壁調査と行政への報告が義務付けられており(建築基準法第12条に基づく定期報告制度)、2022年の制度改正以降はドローンを活用した外壁点検もこの定期調査の手法として認められるようになりました。この背景もあり、大規模施設や高層建築物の管理者を中心にドローン点検の導入が進んでいます。

ドローン撮影を外注する主なメリット

ドローンによる建物点検を専門会社に依頼することで、従来の方法にはないさまざまなメリットが得られます。

  • 調査期間の短縮と業務効率化: ドローンを使えば、足場やクレーン等の準備が不要なため、点検作業にかかる時間を大幅に短縮できます。外壁全面の調査でも、これまで数週間かかっていた作業がわずか1日程度で完了するケースもほとんどです。調査が迅速に終われば、建物の利用者やテナントへの影響も最小限に抑えられます。
  • コストの削減: 足場組立や高所作業車の手配といった仮設設備が不要になるため、調査にかかるコストを大きく圧縮できます。従来は足場設置だけで調査費用の数倍の費用が発生することもありましたが、ドローン外注なら必要な人員も少なくて済むため、人件費も含めた総費用を抑えることができます。
  • 安全性の向上: 高所に人が登らなくて済む分、作業員の墜落や転落事故のリスクをゼロに近づけることができます。実際に、高所での転落事故は建設現場における重大災害の一つですが、ドローン点検を活用することで作業員が危険箇所に立ち入らずに済み、安全に点検を完了できます。また足場やゴンドラ自体の倒壊・落下といったリスクもなくなるため、周囲への安全面でも安心です。
  • 高精度な点検と記録: ドローンに搭載した高解像度カメラ赤外線カメラによって、従来の目視よりも正確で詳細な点検が可能です。例えばドローンであれば外壁に対して真正面から撮影できるため、斜め角度の写真よりも分析精度が高まります。取得した画像データは静止画や動画として記録できるため、点検結果を後からじっくり確認したり、経年劣化の比較を行ったりすることも容易です。こうした記録を蓄積することで、劣化傾向を長期的に把握して計画的なメンテナンスに役立てることもできます。
  • 専門技術の活用と法令遵守の安心感: ドローンの操縦や赤外線診断には専門的な知識と技能が求められますが、外注先の業者は経験豊富な有資格者が対応します。国土交通省の技能証明(ドローンパイロットライセンス)や「赤外線建物診断技能士」といった資格を持つスタッフが調査にあたるため、確かな技術による信頼性の高い点検結果が得られます。また、ドローン飛行には航空法などの遵守すべき法律や許可申請手続きがありますが、信頼できる業者に任せればそうした煩雑な手続きも一任でき、万一の事故に備えた保険体制も整っているため安心です。

以上のように、ドローンによる点検をプロに委託することで、効率・コスト・安全性の面で大きな利点が得られ、専門知識を活かした質の高い調査が可能となります。

外注サービスを利用する際の注意点

一方で、ドローン点検を外注するにあたって事前に注意しておきたいポイントもあります。メリットを最大限生かすために、以下の点に留意しましょう。

  • 天候による作業影響: ドローンは雨風など気象条件に大きく左右されるため、点検日は天候を選ぶ必要があります。強風時にはドローンが安定飛行できず、墜落の危険が高まるため、風速5m/s以上の場合は飛行を中止するなど安全を優先した計画が重要です。また雨天時も機体や機材が濡れて故障する恐れがあるため飛行不可となります。外壁調査で赤外線カメラを使う場合は、晴天の日中で外壁が適度に温められている時間帯が適しており、天候次第では日程変更も必要です。
  • 飛行禁止エリアと許可申請: ドローンはその飛行空域によっては法律で飛行が制限されている場所があります。例えば空港周辺や都市部の人口密集地、高度150m以上の空域など、国土交通省への事前の許可・承認が必要なケースがあります。無許可での飛行は法律違反となり罰則の対象にもなるため、対象の建物が飛行可能な場所かどうか事前確認が必要です。通常、専門業者であれば必要な許可を取得した上で飛行計画を立ててくれますが、依頼する側も基本的な制限について把握しておくと安心です。また、皇居や国会議事堂周辺など特別にドローン飛行が禁じられている区域もあります。建物の所在地が該当しないか注意しましょう。
  • 信頼できる業者の選定: ドローン点検を成功させるには、依頼する業者選びも重要です。特に操縦者の技能や保有資格、過去の実績はしっかり確認しましょう。法律上、2022年からドローン操縦者に対する国家資格制度(無人航空機操縦者技能証明)が始まっており、資格を持たない操縦者が飛行させる場合にはその都度の許可申請が必要になります。可能であれば有資格のパイロットが在籍する会社に依頼するのが安心です。加えて、対人・対物の損害賠償保険に加入しているか、安全運航のためのマニュアルや体制が整っているかもチェックポイントです。複数社から見積もりを取り、サービス内容や料金、対応の丁寧さなどを比較検討するのも良いでしょう。
  • 周囲への配慮: ドローン飛行時には周囲の人や建物への配慮も欠かせません。ビルの管理会社や入居者には事前にドローン点検を行う日時を知らせておき、飛行中は第三者が近づかないよう安全を確保する必要があります。また、都市部で隣接する建物がある場合はプライバシーへの配慮も大切です。カメラの映像に無関係な敷地や窓内部が映り込まないよう撮影範囲を調整したり、必要に応じて周辺住民へ協力をお願いしたりするなど、専門業者と連携してトラブル防止に努めましょう。

以上の点に注意すれば、ドローン外注による建物点検を安全かつ有効に活用できるはずです。

まとめ

ドローンを活用した建物外壁・屋根点検を外注することには、従来の方法では得られなかった大きなメリットが数多くあります。短期間・低コストで高所の詳細な調査が行えるため、建物の所有者や管理担当者にとって、劣化の早期発見とメンテナンス計画の最適化につながります。一方で、安全に確実な成果を得るためには、信頼できる専門業者に依頼し、天候や法規制などの条件を踏まえて計画を立てることが重要です。

弊社ドローンフロンティアは、ドローンによる建物点検サービスを専門に行っており、赤外線技術を含む高度な調査ノウハウと公的資格を持つスタッフによる安全点検を提供しております。ドローン点検の導入をご検討の際は、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。

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