赤外線調査

特定建築物定期調査の重要性と安心して任せられる業者選定のポイント

投稿日:2025年6月2日 更新日:

ビルやマンションなど多数の人が利用する建築物を安全に維持するためには、定期的な点検と適切な管理が欠かせません。日本の法律では、一定の規模や用途に該当する建築物について「特定建築物定期調査」(建築基準法第12条に基づく定期報告)を実施し、その結果を行政へ報告することが義務付けられています。建物の所有者・管理者にとって、法令を遵守しつつ建物の安全を確保するためには、この定期調査の内容を正しく理解し、信頼できる専門業者に点検を依頼することが重要です。

本記事では、特定建築物定期調査の概要と調査対象となる建物や調査内容を解説し、法令遵守・安全管理の観点から定期調査の意義を考察します。さらに、実務的な配慮事項や調査を依頼する業者選びのポイントについても詳しく紹介します。特定建築物定期調査を確実に実施し、安心して建物管理を任せられるようにするためのヒントをつかんでいただければ幸いです。

特定建築物定期調査とは

建築基準法第12条に基づく特定建築物定期調査は、一定の用途・規模を有する建物について定期的に専門家が建物の状態を調査し、その結果を特定行政庁(各地域の建築主事や都道府県知事等)に報告する制度です。

劇場やデパート、病院、ホテル、学校、マンションなど、多くの人が利用する建築物や、高齢者施設など防火・避難上重要な建物が「特定建築物」に指定されます。その所有者・管理者は所定の時期ごとに建物の敷地・構造・設備等を点検し、異常の有無を報告しなければなりません。調査は建築士などの有資格者が行い、建物の安全性や法令適合性を確認します。

特定建築物定期調査の報告頻度は建物の種類や項目によって定められており、例えば建物の外壁や構造部分の調査は3年ごと、建築設備や防火設備の点検は毎年などとされています(具体的な周期は各自治体の条例等で異なります)。

調査結果は所管行政庁へ提出する義務があり、もし報告を怠ったり虚偽の報告をした場合、建築基準法違反として100万円以下の罰金が科される可能性があります。こうした法的義務は単に書類上の手続きではなく、建物利用者や周辺の人々の安全を守るための重要な取り組みです。定期的に専門調査を実施し、劣化や不具合を早期に発見・対処することが大きな事故防止と建物の健全な維持管理につながります。

近年では定期報告制度の強化も進められています。例えば2008年には建物外壁のタイル剥落事故が社会問題となり、この教訓から外壁調査の基準が厳格化されました。新築または改築後10年以上経過した建物については、3年ごとの目視および部分打診に加え、少なくとも10年ごとに建物外壁の全面打診等による詳細な調査を行うことが義務付けられています。こうした規制強化によって、外壁タイルやモルタルの浮き・ひび割れといった劣化箇所を早期に発見し、落下事故を未然に防ぐことが期待されています。

特定建築物定期調査の調査内容

特定建築物定期調査では、建築物の敷地・構造・設備のさまざまな要素について点検が行われます。国の告示や各自治体の基準によって細かな調査項目が定められていますが、主なチェック項目は次の5分野に大別できます。

敷地および地盤:敷地内の地盤沈下や傾斜の有無、敷地内通路や塀・擁壁に異常がないかを確認します。擁壁がある場合は亀裂や排水孔の詰まり、土砂の漏出がないかなど地盤周りの安全性を確かめます。

建築物の外部:外壁や構造躯体部分の劣化・損傷を調べます。基礎に沈下によるひび割れや欠損がないか、鉄筋コンクリート造であれば鉄筋の露出がないかを点検します。外壁仕上げ材(タイル・モルタル等)の剥離やひび割れの有無も重要な項目です。外壁に取り付けた看板や室外機がしっかり固定され、落下の恐れがないかも確認します。防火地域などでは外壁の防火性能が基準を満たしているかも併せてチェックします。

屋上および屋根:屋上・屋根の防水層や屋根材の劣化、破損の状況を点検します。屋根材に欠損がないか、金属部に錆や腐食が進んでいないか、笠木(屋上立ち上がり部)の状態などを確認します。防火地域では屋根の不燃化状況を図面で検証します。屋上に設置された貯水槽・冷却塔、広告塔など大型設備があれば、その固定部に劣化や緩みがないかも調査します。

建築物の内部:建物内部(主に共用部分)では、防火区画や壁・床・天井などの状態を確認します。防火区画(防火壁や区画扉)が基準通り設置・維持され、経年による隙間や損傷がないかを見ます。壁や床に大きなひび割れや腐食がないか、天井材がしっかり固定され落下しない状態かも点検します。防火扉など防火設備が正常に作動するか、閉鎖の妨げとなる物が置かれていないかも確認対象です。換気設備は動作確認、採光設備は図面で光の確保状況を検証するなど、建築設備の機能も点検範囲に含まれます。なお、建物内部にアスベスト含有建材が使われている場合、劣化状況によっては別途詳細な調査が必要になることもあります。

避難施設等:非常時に人が避難するための設備や経路を点検します。廊下や出入口に必要な有効幅が確保され、避難通路に障害物が置かれていないかを確認します。各部屋から避難階段までの距離が規定内かを図面でチェックします。非常階段は手すりの有無や幅の確保、錆・腐食による強度低下がないか点検します。バルコニーが避難経路になる建物では、手すりの強度や避難ハッチ・はしごの正常作動も確認します。排煙設備や非常用エレベーター・非常照明が適切に維持管理され、いざという時に機能するかも調査します。

法令順守と安全管理の重要性

特定建築物定期調査を確実に実施することは、法令順守のみならず建物を利用する人々の安全と安心を守ることに直結します。建物の不具合を放置すれば、外壁の落下による人身事故や設備故障による火災・浸水、避難経路の不備による被害拡大など重大なリスクがあります。

実際に老朽化した建物でタイル片が落下し歩行者が負傷した例や、非常時に非常扉が開かず避難に支障を来した例も報告されています。こうした事故はオーナーにとって法的責任を問われるだけでなく、人命に関わる深刻な結果を招きかねません。

定期調査を着実に行い、指摘事項があれば早急に補修・改善することは、法令上求められるだけでなく安全管理上も不可欠です。定期調査報告書は建物の「健康診断書」ともいえます。プロの点検によって初めて判明する劣化箇所も多く、早期発見・対処すれば補修費用を抑え建物の寿命を延ばすことにもつながります。

また、適切な維持管理がなされている建物はテナントや居住者からの信頼にもつながります。建物の資産価値を守るためにも、法定点検を疎かにせず計画的に安全管理を続けることが大切です。

定期調査を円滑に進めるためのポイント

特定建築物定期調査を円滑に実施するには、事前の準備と段取りも重要です。以下に基本的な流れと留意点を示します。

対象の確認とスケジュール把握
自身の建物が特定建築物に該当し、いつまでに報告が必要かを確認します。行政から通知が届く場合もありますが、対象か迷ったら管轄行政に問い合わせましょう。

調査の計画と事前準備
期限に余裕をもって資格を持つ調査業者を選び、調査日を決めます。建物の図面や前回の報告書があれば共有し、テナントや居住者にも点検予定を事前に知らせて協力を得ます。

調査当日の対応
当日は屋上や機械室など全ての点検箇所に立ち入れるよう準備します。ドローン飛行などを行う際は周囲の安全確保に協力し、調査員からの質問には管理者として可能な範囲で対応しましょう。

報告書提出とフォローアップ
調査後、業者から報告書が渡されるので内容を確認し、必要事項を記入のうえ期限までに行政へ提出します。指摘事項があれば早めに修繕に取り組み、報告書は次回まで保管しておきます。

信頼できる調査業者を選ぶポイント

調査業者を選定する際は、以下のような観点を考慮しましょう。

資格と実績の確認:一級建築士など有資格者が在籍し、調査実績が豊富な業者であることが重要です。高層ビルや大規模マンションの経験が豊富で、調査スタッフに十分な人員がいる業者なら、継続的に安定した点検サービスを期待できるでしょう。

調査方法の提案力と柔軟性:建物の形状や環境により最適な調査方法は異なります。ドローン調査、ロープアクセス調査など様々な手法を組み合わせ、安全かつ確実に点検できる提案ができる業者が望ましいです。最新技術の活用だけでなく、必要に応じて従来手法も柔軟に取り入れてくれる業者なら、あらゆる状況に対応できます。

費用とサービス内容のバランス:複数社から見積もりを取り、料金だけでなく調査範囲やサービス内容を比較検討しましょう。極端に安い見積もりは内容が不十分な可能性があり、高額な場合は足場仮設や詳細診断を含むケースがあります。提示内容をよく確認し、総合的に判断することが大切です。

長期的なパートナー適性:定期調査は今後も続くため、長期的に付き合える業者かも重要です。毎回同じ業者に依頼すれば建物の経年変化を把握した上で点検してもらえる利点があります。問い合わせ対応の丁寧さや報告書の分かりやすさ、アフターフォローの充実度なども含め、信頼関係を築ける業者を選びましょう。

まとめ

特定建築物定期調査を適切に行うことは、法令遵守だけでなく利用者の安全・安心を守ることにつながります。そのためには経験豊富で信頼できる専門業者に依頼し、プロの視点で建物の状態をしっかりチェックしてもらうことが肝心です。前述の選定ポイントを満たす業者であれば、安心して任せることができるでしょう。

例えば、ドローンフロンティアは特定建築物定期調査でドローンや赤外線カメラなど最新技術を活用した高品質な調査サービスを提供している専門業者です。2019年のサービス開始以来、全国で約300件の外壁調査実績があり、年間150棟以上の建物で赤外線診断を実施しています。経験豊富な一級建築士と赤外線診断資格者が在籍し、ドローン空撮による詳細な点検と従来の目視・打診を組み合わせて精度の高い調査を行っています。外壁調査から報告書作成・提出まで一括サポートできる体制も整えており、ドローンを活用することで足場を組まずに高所点検を実施して安全性の向上とコスト削減、調査期間短縮の両立を実現している点も強みです。

法定点検の実施に不安がある場合や、効率的な建物調査を検討したい場合は、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。

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