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外壁全面打診調査とは?対象となる建物や調査方法を解説

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歩行者の安全を守るため、ビルやマンションなどの外壁全面打診調査が建築基準法で義務付けられています。外壁タイルの剥落事故を未然に防ぐために重要なこの調査ですが、どのような建物が対象となり、どのように実施されるのでしょうか。

本記事では、外壁全面打診調査の概要や対象建物の条件、調査内容・方法、そして業者選定のポイントについて解説します。

外壁全面打診調査とは何か

外壁全面打診調査とは、建物の外壁仕上げ材(タイルやモルタルなど)が浮きや剥離を起こしていないかを確認するため、外壁全面にわたって行う打診(たたいて音を確かめる)調査のことです。外壁の劣化によるタイル片の落下事故を防止する目的で行われるもので、いわゆる「12条点検(建築基準法第12条に基づく定期調査)」の一環として実施されます。

特に鉄筋コンクリート造の建物では、経年劣化により外壁仕上げ材と躯体コンクリートの間に隙間が生じ、タイルやモルタルが浮いてしまうことがあります。こうした浮きや剥離は外観から判断が難しい場合も多いため、専門の調査によって早期に発見し、安全を確保する必要があります。

建築基準法の規定により、一定の建物に対して外壁全面打診調査が義務づけられており、適切な時期に調査報告を行わないと100万円以下の罰金が科される可能性があります。法改正(平成20年)以降、この調査は竣工後おおむね10年を経過したタイミングで初回実施が必要となり、その後も約10年ごとに外壁全面打診調査を定期的に行い、結果を行政に報告しなければなりません。

外壁全面打診調査の対象となる建物

外壁全面打診調査の対象となる建物は、「特定建築物」と呼ばれる不特定多数の人々が利用する大規模な建築物が中心です。これらの建物では、外壁の老朽化によってタイルや外装材が落下し、通行人に危害を加える事故を防ぐために、外壁の定期調査が義務付けられています。対象となる代表的な建物用途の例を以下に挙げます。

  • 大規模な共同住宅(マンションなど)
  • オフィスビル・商業ビル(事務所、百貨店、ショッピングモール等)
  • ホテル・旅館など宿泊施設
  • 病院・老人ホームなど不特定多数が利用する福祉施設
  • 学校・劇場・映画館・集会場など多数が集まる施設

上記のような建物で高さが一定以上(例:地上3階建て以上等)かつ外壁仕上げ材にタイル貼りやモルタル塗りが使われている場合、外壁全面打診調査の対象となります。ただし、外壁仕上げがカーテンウォールや金属パネルなどの乾式工法で取り付けられている建物は対象外とされるケースが一般的です(乾式工法は構造的に外壁材の落下リスクが低いため)。なお、具体的な対象建築物の基準は自治体によって多少異なる場合があるため、自分の建物が該当するかどうかは所在地の行政庁の案内を確認するとよいでしょう。

また、上記のような特定建築物に該当しない場合でも、築年数が経過した建物で外壁にタイルやモルタル仕上げを用いているのであれば、事故防止のため自主的に外壁調査を行うことが望ましいと言えます。

外壁全面打診調査の調査内容と実施方法

外壁全面打診調査では、建物外壁の劣化状況を目視調査打診調査によって詳しく確認します。まず調査員が外壁全体をくまなく観察し、ひび割れや剥がれ、錆汁(鉄部のサビによる染み)などの異常箇所をチェックします。その上で、タイル貼りやモルタル仕上げの部分について、専用の打診棒やハンマーで表面を軽く叩いていきます。健全な部分と比べて打診音が濁る箇所は、内部に空洞ができて外壁材が浮いている可能性が高く、重点的な補修が必要となります。調査ではこのようにして浮きが疑われる範囲を特定し、マーキングや記録写真によって位置を明確にします。

調査の実施方法としては、建物の規模や形状に応じて様々な工法が採られます。従来は仮設足場を組み立て、作業員が直接外壁に触れながら全域を打診・点検する方法が主流でした。足場を用いた方法は時間と費用がかかるものの、近接目視と打診により精度の高い調査が可能です。

近年では足場を設置せずに調査を行う手法も増えており、高所作業車(作業用昇降車)の使用や、建物に設置されたゴンドラによる巡回、さらには作業員がロープとハーネスで屋上から降下するロープアクセス工法などが活用されています。ロープアクセスによる外壁打診調査は、足場設置に比べて迅速に作業できコストも抑えられるため、補修工事も含め広く普及しつつあります。

さらに近年では、**ドローン(無人航空機)**を活用した新しい調査方法も登場しています。赤外線サーモグラフィカメラを搭載したドローンで外壁面を撮影すると、外壁の内部の浮きがある部分は健全部分と表面温度の差異が生じるため、画像解析によって劣化箇所を非接触で検出できます。この赤外線調査は国土交通省のガイドラインによって精度が認められた手法で、条件が整えばテストハンマーによる打診と同等の精度で外壁全面調査を実施することが可能です。

ドローンを用いることで、人が立ち入ることが難しい高所でも足場なしで調査ができ、全体の所要時間を大幅に短縮できる利点があります。ただし、ドローン調査は天候や周囲環境の影響を受けるため、必要に応じて従来の打診も組み合わせながら総合的に判断することが重要です。

まとめ

外壁全面打診調査は、建物の安全性を維持し、事故を未然に防ぐために欠かせないプロセスです。特に人通りの多い場所に立つ建築物では、定期的な外壁調査と適切な補修によって、利用者や周囲の人々に安心・安全を提供できます。また、外壁を良好な状態に保つことは建物の美観維持や資産価値の向上にもつながります。

近年はドローンや赤外線技術の発展により、効率的かつ高精度な外壁全面打診調査が可能になってきました。ドローンフロンティアでは無人航空機(ドローン)を活用した外壁調査サービスを提供しており、足場を組むことなく迅速な調査と詳細な劣化診断が可能です。経験豊富なスタッフが安全管理を徹底しながら調査を実施しますので、外壁全面打診調査をご検討の際には、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。

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