赤外線調査

外壁タイルの浮きとは?原因・点検方法と補修、維持管理の重要性

投稿日:2025年7月16日 更新日:

マンションやビルなどの外壁に用いられるタイルは、美観や耐久性に優れています。しかし年月の経過や施工・環境要因によって、タイルが下地から部分的に剥がれてしまう「タイルの浮き」が発生することがあります。タイルの浮きを放置すると剥落(タイルが落下すること)事故につながり、歩行者への危害や建物の資産価値低下を招きかねません。 建物所有者・管理者には外壁タイルの安全を維持する責任があり、実際に建築基準法により定期的な外壁調査と報告が義務 付けられています。

この記事では、タイル浮きとはどのような現象か、その原因やリスク、点検方法と補修対策について解説し、外壁タイルの維持管理の重要性をお伝えします。

※タイル貼り外壁についての全般的な解説は、こちらの記事をご覧ください。

タイル貼り外壁の落下リスクと劣化診断方法 ~ドローンを活用した外壁点検~

タイルの浮きとは何か?

タイルの浮きとは、外壁に貼り付けられたタイルが下地から部分的に剥がれ、浮いてしまっている状態を指します。通常、外壁タイルはコンクリート下地にモルタルや接着剤で密着させて施工しますが、経年劣化や施工不良、外力の影響により、この密着力が低下するとタイルと下地の間に隙間(空洞)が生じます。これが「浮き」の状態です。見た目にはタイルがまだ張り付いているように見えても、内部では剥がれかけており、打音検査などで空洞音が確認されます。

タイル自体は耐久性が高い素材ですが、貼り付けに使用したモルタルや接着剤は紫外線・雨風・気温差などで徐々に劣化するため、時間の経過とともにどうしても浮きが発生しやすくなります。また、タイルの施工方法には下地モルタルを使う「湿式工法」と、金具に引っ掛けて貼り付ける「乾式工法」がありますが、特に従来から多い 湿式工法のタイル仕上げでは経年で浮きが生じるリスクが高くなります。 

外壁タイルが浮く原因

外壁タイルの浮きは様々な要因で引き起こされます。主な原因を挙げると次のとおりです。

経年劣化:建物の築年数が長くなると、コンクリートやモルタルの劣化によりタイルとの付着力が低下し、浮きが発生します。

施工不良:タイル貼り施工時の接着不足や材料配合ミスなど品質不良があると、時間が経つにつれて剥がれやすくなります。

温度・湿度変化:昼夜や季節の温度差による膨張収縮や、降雨後の乾燥過程での湿度変化によって、タイルと下地に微小な動きが生じ、接着力が弱まることがあります。

地震など外的衝撃:大地震や強風など建物に大きな振動・変形を与える外力によって、タイルと下地の密着が損なわれる場合があります。

構造体の劣化(鉄筋腐食):コンクリート内部の鉄筋が錆びて膨張すると、内部から圧力がかかりコンクリート表面が押し出されてタイルが浮くことがあります。特に鉄筋のかぶり厚さ(表面までの距離)が不足した場合に起こりやすい現象です。

タイル浮きを放置するリスク

外壁タイルの浮きをそのまま放置すると、やがてタイルが下地から完全に剥がれて落下(剥落)する危険性があります。高所からタイルが落下すれば、下を歩く通行人や敷地周辺の車両等に被害を及ぼす可能性があります。実際にタイル剥落による事故も報告されており、 万が一人身事故が発生した場合、建物の所有者・管理者がその責任を問われます。 

また、一部で浮きが発生しているということは、下地モルタルの劣化が進行している兆候でもあります。浮きを放置すれば周辺のタイルも次々と剥がれやすくなり、補修範囲が拡大して修繕費用が増大する恐れがあります。さらに、浮いたタイルの隙間から雨水が侵入すると建物内部の腐食や漏水被害につながることも考えられます。このようにタイル浮きを見逃すことは安全面・経済面で大きなリスクとなるため、早期発見と対処が肝要です。

※タイル貼り外壁の落下リスクや注意点についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

タイル外壁のデメリットと注意点 – 耐久性・落下リスク・維持コストを解説

タイル浮きの点検方法と定期調査の義務

外壁タイルの浮きは高所や目視で確認しづらい箇所に発生することが多いため、専門的な調査による早期発見が重要です。タイル浮きを確認するための主な点検方法には以下のようなものがあります。

打診調査

専門の調査技術者がハンマーや打診棒で タイルを一枚一枚叩き、その音で内部の浮きを判定する方法 です。経験が必要な作業ですが、浮きの有無を直接確認できる信頼性の高い従来からの手法です。

ただし外壁全面を打診するには足場の設置や高所作業車の使用が一般的で、大規模な建物では調査準備に多大な手間と費用がかかります。落下防止の網や仮設足場だけでも数百万円規模の費用となる場合があり、調査自体も長期間に及びがちです。

赤外線調査

赤外線サーモグラフィーカメラを用いて、 外壁表面の温度分布から内部の浮きを検知する方法 です。日射で温められた外壁は、下地と密着している部分と浮いて空洞になっている部分で温度の上昇・冷え方に差が生じるため、その温度差を画像上で捉えて浮きを発見します。赤外線調査は非接触で短時間に広範囲を調べられるメリットがあり、近年では赤外線カメラを搭載したドローンを活用した外壁点検も注目されています。 ドローンであれば高所でも足場を組む必要がなく、短期間・低コストで精度の高い調査が可能 です。ただし赤外線調査は天候や外気条件に左右されやすく、適切な環境下で実施する専門知識が求められます。

※ドローン赤外線調査についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

ドローン調査とは?外壁調査での活用メリットと法制度を解説

こうした外壁タイルの浮きに関する調査は、建物の安全管理上欠かせないだけでなく、法律的にも義務づけられています。建築基準法第12条に基づく特定建築物の定期報告制度では、 一定規模以上のマンション・ビル等について専門家(有資格者)による外壁の定期調査と行政への報告が義務 です。この中で外壁仕上げ材(タイル・石貼り・モルタル仕上げ等)の劣化状況については、おおむね6ヶ月〜3年に一度の部分打診(人の手の届く範囲)と、おおむね10年ごとに一度の全面打診を行う基準が示されています。築10年を経過した建物では初めて全面的な外壁調査が必要となり、その後も定期的に劣化状況を確認することで剥落事故を防止しようという趣旨です。

また 2022年の法改正では、この外壁調査においてドローンを用いた赤外線による調査が従来の打診と同等以上の精度を持つ方法として正式に認められました。 定期報告の対象となる建物では行政への報告義務(3年ごとなど建物用途に応じた周期)があり、怠ると罰則も規定されています。対象外の小規模建物であっても、外壁タイルの安全点検は建物の所有者責任として定期的に実施することが望ましいでしょう。

※外壁調査・点検の法的義務についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

外壁打診調査は義務?建築基準法が定める理由と調査方法を解説

外壁タイルの維持管理の重要性

外壁タイルは他の仕上げ材に比べ耐久性が高く、経年劣化しにくいと言われますが、決して メンテナンスフリーではありません 。タイル自体は半永久的に残っても、下地や目地材の劣化は避けられず、放置すれば浮きやひび割れなど様々な不具合が発生します。定期点検早めの補修を心掛けることが、建物の安全と美観を長く維持するポイントです。

特定建築物に該当するマンション等では法律に則った調査が必要なのはもちろんですが、それ以外の建物でも築年数に応じた自主点検を行うことが望まれます。日頃から外壁の様子に注意し、 タイルの目地にひび割れが見えたり、白華現象や錆汁が発生している場合は内部で浮きが進行している可能性 があります。そのような兆候を見つけた際には全体調査を検討するべきです。定期的な外壁調査適切な維持管理を行うことで、タイル剥落事故を未然に防ぎ、建物の資産価値を守ることにつながります。

※外壁タイルのメンテナンスについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

外壁タイルの点検義務とメンテナンス不足で後悔しないために知るべきこと

タイル浮き調査は信頼できる専門業者へ依頼を

外壁タイルの浮きに関する点検や補修は、高所作業や専門技術を伴うため、信頼できる専門業者に依頼することが大切です。タイルの打診調査ひとつとっても、豊富な経験と適切な資格を持った技術者でなければ正確な診断は困難です。最近ではドローンや赤外線技術を活用した新しい調査手法も登場しており、専門業者はこれらの技術も駆使して効率的かつ安全な外壁診断を提供しています。

弊社ドローンフロンティアでは、外壁調査サービスを全国で展開しています。 ドローンを用いることで仮設足場を組むことなく短期間で広範囲を点検でき、コストも従来の打診調査より抑えることが可能 です。弊社は国土交通省から日本全国の人口密集地におけるドローン飛行許可を取得しており、市街地のビル外壁でも安全に調査を実施できます。

また、 現場の状況に応じて打診調査と併用することも可能 です。ドローンによる赤外線調査が困難な箇所は、ロープアクセス等の打診調査を併用することで最適な調査手法を提案いたします。

外壁タイルの浮きは早期発見・早期対策が肝心です。少しでも心配な兆候がある場合は、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。専門家の視点から的確な調査とアドバイスで、建物の安全・安心をサポートいたします。

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