建物の外壁は、常に雨風や日差しにさらされるため、年月とともに劣化が進みます。外壁タイルの剥落事故やひび割れからの雨水侵入による建物内部の損傷など、外壁の不具合は安全面や建物の価値に大きく影響します。そのため、建物管理者にとって外壁調査は欠かせない業務の一つです。
本記事では、 外壁調査の概要や必要性、具体的な調査方法、法的義務、そして最新技術であるドローンを活用した調査手法について解説 します。
外壁調査とは
外壁調査とは、ビルやマンションなど建物の外壁に劣化や損傷がないかを調べる調査です。具体的には、外壁のタイルやモルタルの「浮き」(下地から剥がれかけて空洞ができている状態)やひび割れ、塗装の剥がれ、錆などの有無を確認します。
新築当初は外壁も健全ですが、経年劣化によって少しずつ状態が変化します。特にタイル貼りやモルタル仕上げなど湿式工法の外壁では、雨水の浸入や昼夜の温度差によって下地との間に隙間(空気層)が生じ、年月とともにその隙間が広がって外壁の浮きが発生します。 浮きが大きくなるとタイルやモルタル片の剥落に繋がり、落下すれば周囲に危害を及ぼす危険性 があります。そのため、定期的な外壁調査を行い、外壁材がしっかりと建物に密着しているか、ひび割れなどの異常がないかを把握することが重要です。
外壁調査が必要な理由と法的義務
外壁調査を怠ると、建物利用者や通行人の安全に関わる重大なリスクを招きます。以下に、外壁調査が必要とされる主な理由を挙げます。
法令による義務
日本の建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、不特定多数の人が利用する一定規模以上の建築物(特定建築物)について、外壁の定期調査が義務付けられています。おおむね1~3年ごとに専門技術者による目視や一部の打診等による点検を行い、さらに建物の竣工後(または前回の外壁改修後)10年目には、外壁全面にわたる詳細な調査(全面打診調査)を実施してその結果を行政に報告しなければなりません。 この義務を怠ると、建物所有者・管理者には罰則(罰金)が科せられる可能性 があります。
落下事故の防止
外壁の劣化を放置すると、タイルやコンクリート片の剥落事故につながる恐れがあります。実際に全国で外壁材の落下により通行人が負傷する事故が発生しており、1989年の北九州市での外壁落下事故を契機に外壁安全への関心が高まりました。外壁調査を定期的に実施して劣化箇所を早期発見・補修することで、こうした落下事故のリスクを未然に防ぐことができます。
建物の価値・美観維持
ひび割れや塗装の剥がれが放置された外壁は見た目にも悪く、建物の資産価値を下げる要因になります。定期的に外壁調査を行い、劣化箇所を補修することは、建物の美観を保ち利用者や居住者に安心感を与えるだけでなく、長期的に見て不動産価値の維持・向上にも繋がります。
災害時の安全確保
大地震など災害時には、外壁の浮きやひび割れがあると剥落の危険性が高まります。定期点検で外壁の状態を把握し健全に保つことは、災害時に建物周辺への被害や人命への危険を減らすことにも寄与します。
以上のように、 安全面・法遵守・資産保全の観点から、外壁調査は建物管理者にとって欠かせない取り組み です。

外壁調査の方法と種類
一口に外壁調査と言っても、いくつかの手法やアプローチがあります。大きく分けると、直接外壁に接触して調べる方法と、機器を用いて非接触で調べる方法があります。ここでは代表的な調査方法を紹介します。
目視による外壁調査
建物の外壁を目視で確認する方法です。調査員が双眼鏡や高倍率カメラなどを用いて地上や建物内部から外壁面を観察し、ひび割れ、変色、錆汚れ、塗膜の膨れ・剥がれなどの異常をチェックします。手の届く範囲であれば直接触れて確認することも可能です。目視調査は足場を組まなくても比較的手軽に実施でき、異常の兆候を広範囲にわたり概観するのに適しています。
しかし、 外観から判断できるのは表面化した劣化だけであり、タイル下地の浮きなど内部に潜む劣化までは発見できない という限界があります。そのため、目視で異常が疑われた箇所については、後述する打診調査や詳細な機器調査で確認することが望まれます。
打診による外壁調査
打診調査は、 外壁表面をテストハンマーや打診棒で軽く叩き、その音の違いで内部の浮きを検出する伝統的な手法 です。正常な部分を叩くと澄んだ音がしますが、内部が浮いて空洞化している部分では音が濁った高い音になり、明らかに響き方が異なります。経験豊富な技術者であれば、打診音を聞き分けることでその場で劣化の有無を判定できます。打診調査は特殊な機器を必要とせず人間の感覚で診断が可能で、正しく実施すれば非常に信頼性の高い結果が得られます。
打診は調査箇所が低層であれば手の届く範囲を直接叩いて確認できますが、建物が高層になるほど高所での作業が必要になります。従来は建物全体を詳細に調べる場合、建物の周囲に仮設足場を組んだり、高所作業車(高所用の作業台車)を用いたりして打診が行われてきました。
また、近年では仮設足場を設置せずに建物屋上からロープを垂らし、調査員がロープに身を預けて外壁を降下しながら叩いていくロープアクセス打診調査も多く実施されています。 ロープアクセス工法は足場を設置する必要がないため、準備とコストを大幅に削減できるメリット があります。ただし、建物の屋上にロープの支点を取るための構造が無い場合や、天候が悪い日には作業できないなどの制約もあります。
打診調査のメリット
- 人の手と耳による調査のため精度が高く、小さな異常もその場で発見・判断できます。
- 調査員が直接外壁に触れるため、劣化箇所に印を付けるなど、後の補修工事に役立つ情報を現場で記録できます。
打診調査のデメリット
- 高層部の調査には足場や高所作業車など大掛かりな設備・準備が必要となり、調査期間・費用が増大します。
- 高所作業のため安全面でのリスクを伴います。
赤外線による外壁調査(ドローン活用)
近年注目されているのが、赤外線カメラを用いた外壁調査です。建物の外壁面を赤外線サーモグラフィで撮影すると、表面温度の分布から内部の異常を推測できます。例えば、タイル下地に浮きがある部分は空気層が存在するため、日中に太陽光で加熱されると他の健全部分より表面温度が高くなります。この 温度差を赤外線画像で可視化することで、下地の浮きが疑われる箇所を非接触で広範囲に検出 できるのです。
※赤外線外壁調査についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
赤外線による外壁調査は、特にドローン(無人航空機)との組み合わせで大きな威力を発揮します。高性能な赤外線カメラを搭載したドローンを飛行させれば、人が近づかなくても高層建物の外壁全体を短期間(場合によっては1日程度)でくまなくスキャンし、劣化箇所を洗い出すことが可能です。足場を組む必要がなく作業員の高所作業リスクもないため、大幅な時間短縮とコスト削減につながる点は大きな利点です。また、 撮影した赤外線画像データを解析することで、調査結果を客観的な記録として残せるメリット もあります。
※ドローンを活用した外壁調査についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
赤外線外壁調査のメリット
- 非接触で広範囲を調べるため、高層建物でも効率的に全面調査ができます(調査日数の大幅短縮)。
- 仮設足場等が不要で、人が高所に登らないため、作業上の安全性が高まります。
- 調査コストを抑えやすく、得られた赤外線画像はデータとして保存・共有できます。
赤外線外壁調査のデメリット
- 表面温度の差異を利用するため、晴天日など十分な日照や昼夜の気温差がある環境でないと効果が出にくく、気象条件に左右されます。
- 微細な浮きや初期の劣化は温度差が小さく、見落とす可能性があります。
- 取得した熱画像の解析には専門知識が必要で、異常の有無や程度を正確に判断するには経験が求められます。
なお、従来は全面打診が原則だった定期報告制度の外壁調査ですが、近年の法改正により赤外線カメラを用いた外壁調査(ドローン活用を含む)も正式に認められました。国土交通省のガイドラインでは、 テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有することを条件に、赤外線調査による定期報告が可能 と示されています。そのため、法律で義務づけられた10年ごとの外壁全面調査においても、条件が整えばドローン赤外線調査を活用するケースが増えています。
ただし、建物の構造や仕上げ材の種類、立地条件によっては赤外線では十分確認できない場合もあるため、その場合は従来通り打診による詳細調査を併用するなど、 状況に応じた使い分けが重要 です。

まとめ
定期的な外壁調査は、建物の安全管理と資産価値の維持に不可欠です。外壁の劣化は目に見えにくい場合もありますが、専門業者に依頼して適切な方法で調査を行うことで、早期に不具合を発見し大きな事故や損傷を防ぐことができます。
ドローンフロンティアでは、 赤外線調査およびロープアクセス打診調査の双方に対応可能であり、調査対象の建物や劣化状況に応じて最適な手法を選択して外壁調査を実施 しています。豊富な実績と最新技術による高精度な調査で信頼性の高い結果をご提供いたします。外壁調査をご検討中の建物管理者様は、ぜひドローンフロンティアにご相談ください。
