
国は特定建築物を対象に建築基準法の第12条で定めた「特定建築物定期調査」、いわゆる「12条点検」を義務付けています。特定建築物となるのは一定規模の学校、児童福祉施設、商業施設、オフィスビル、旅館・ホテル、マンション等。定期調査を行った結果は特定行政庁に報告しなければなりません。12条点検の義務に違反すると罰金を課せられる恐れがあります。建物や設備の定期調査は法律的な義務があるからだけではなく、そこに集う、住まう人々が安心して、安全に活動・生活するためにも重要な取り組みです。
特定建築物定期調査とは?
特定建築物定期調査(12条点検)はデパートやホテル、病院など、多くの人々が利用する特定建築物として指定された建物の老朽化や設備の不備による事故を防ぐために行われる調査であり、建物の適切な維持管理を持続させることが目的です。調査対象・内容は次の通りです。
・ 敷地及び地盤 : 敷地内の通路、擁壁の確認
・ 建築物の外部 : 外壁の劣化の確認
・ 屋上及び屋根 : 屋上周りの劣化の確認
・ 建築物の内部 : 防火区画や、床、天井の確認
・ 避難施設等 : 避難施設、非常用設備の確認
特定建築物定期調査違反は罰金が課せられることも
特定建築物定期調査では外装タイルの劣化・破損などの外壁の状況は3年ごと、共用部分の建築・防火設備は毎年点検し、特定行政庁に報告する必要があります。報告書を提出しなかったり、報告に虚偽が混じっていたりすると、罰金(100万円以下)が課せられる恐れがあります。
定期報告は事故の発生を鑑みて年々規制が強化されています。2008年には外壁からのタイル剥落事故が問題になったことを踏まえ、3年ごとの「目視および部分打診調査」と10年ごとの「全面打診等調査」が義務付けられています。
2025年7月1日から調査・検査内容の見直しがあります
国土交通省は2025年1月、「建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件等の一部を改正する告示(令和7年国土交通省告示第53号)」を公布しました。この見直しは7月1日から施工されることになります。
改正のポイントは定期調査・検査項目の重複解消や合理化、赤外線装置・可視カメラ・センサーなどの新技術のよる調査・検査が可能となることです。政府が1月に公表した合理化の事例では特定建築物定期調査で実施していた常閉防火扉が防火設備定期検査で実施されることになった点が挙げられています。
また、従来、目視による調査・検査となっていた項目で、定期調査・検査実施者が目視と同等以上の情報が得られると判断した、赤外線装置やファイバースコープ、可視カメラ・センサーなどの新技術を利用が認められることになります。
詳細は国土交通省のウェブサイトで確認することができます。
国土交通省「建築基準法に基づく定期報告制度について」
出典:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000039.html
建築基準法における特定建築物とは?

建築基準法12条における特定建築物は国が政令で指定する一定の用途・規模の建築物、あるいは全国の各特定行政庁が指定する建築物のことを指します。一般的には、不特定多数の人が利用する建築物が指定されています。その所有者・管理者は定期的な調査・検査を行い、その結果を特定行政庁と呼ばれる都道府県知事または建築主事を置く市町村の長に報告する義務があります。
特定建築物の種類や規模、定期調査・検査の時期、報告の方法などは、国が定める建築基準法に基づいていますが、各特定行政庁でも決めることができます。大きな都市には、特定行政庁が設けられていることが多く、条例や規則でより詳細な基準を定めることができます。
国の基準では特定建築物に該当しない建築物でも、都道府県や市町村の条例で特定建築物と定められる場合があります。また、国の基準よりも厳しい規模の基準が、都道府県や市町村の条例として定められる場合もあります。こうした基準の違いで報告方法などについても異なる場合があります。
東京で定期調査が必要な特定建築物の定義
国は用途や規模の条件で特定建築物を全国一律に指定しています。しかし、都道府県や市町村の条例で定義や基準などが異なることもあります。東京都は報告時期や付番フロー、ケーススタディなどをわかりやすく作成し、公開してくれています。引用してご紹介いたします。
定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_kenchiku_chousa-houkoku_ch_2_01
定期調査報告における用途コードの付番フローについて
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_kenchiku_chousa-houkoku_ch_3_01
報告対象建築物の判断(ケーススタディ)
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/toshiseibi/pdf_kenchiku_chousa-houkoku_ch_3_02
調査結果を報告するための報告書フォーマット、東京の場合は?
調査結果を報告するための報告書フォーマットは、東京都の場合、公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターのサイトからダウンロードすることができます。
https://www.tokyo-machidukuri.or.jp/tatemono/teikihoukoku
特定建築物定期調査の報告にかかる費用
特定建築物定期調査の報告にかかる費用は、調査費用と報告書作成費用と、報告手数料の合計になります。東京都の特定行政庁に報告をする際にかかる手数料は次のとおりです。
| 報告部分の床面積(㎡)(建築物1棟につき) | 手数料の額( )内は税抜 |
| 500㎡以内 | 5,400円(4,909円) |
| 500㎡を超え、3,000㎡以内 | 6,000円(5,455円) |
| 3,000㎡を超え、5,000㎡以内 | 7,100円(6,455円) |
| 5,000㎡を超え、10,000㎡以内 | 8,900円(8,091円) |
| 10,000㎡を超え、20,000㎡以内 | 15,400円(14,000円) |
| 20,000㎡を超え、40,000㎡以内 | 16,600円(15,091円) |
| 40,000㎡を超えるもの | 19,600円(17,819円) |
この手数料に調査費用と報告書作成費用が加算されることになります。調査費用は調査をする手段(仮設足場、ゴンドラ、高所作業車など)で大きく異なりますが、コスト面と調査の身軽さからドローンでの調査が主流になっています。
特定建築物定期調査の実態
国土交通省が2019年に発表したデータによると特定建築物定期調査に該当する建築物の30パーセントが現在も報告を怠っています。
その原因は高所での点検作業により発生するコストが高いことにあります。目視点検では地上から双眼鏡を使って点検をすることができますが、人間が実際に壁を叩いて判断する「全面打診」の場合は、仮設足場やゴンドラ、高所作業車が必要になります。それらの資材を用意するコストが捻出できない結果、調査ができなくなるというケースが発生するのです。
特定建築物定期調査のコストを大きく引き下げる「ドローン」
ドローンを利用して特定建築物調査をするときは人間を高所に挙げる必要がなくなるので、足場の設置やゴンドラのような大型設備の用意にかかっていた分のコストを大きく抑えることができます。2,000平米のマンションの場合、ドローンによる調査と足場を架けた打診調査のコストを比較すると以下のようになります。
・打診調査
費用:平米単価1,000円前後(足場代+打診調査費)=200万円
工期:2週間〜4週間程度(足場を組む時間も含む)
・ドローンによる赤外線調査
費用:平米単価360円=72万円(撮影・赤外線解析・報告書作成費用)
工期:1〜2日程度(気候条件の予備日も含む)
ドローンによる赤外線調査であれば、3分の1ほどのコストで外壁の定期点検を行うことができるのです。また報告書の納品もドローンによる調査の場合は4週間程度です。打診調査が終わる頃に、ドローン調査は報告書の納品まで終わっているということになります。
都での特定建築物定期調査実績が豊富なドローンフロンティア
ドローンフロンティアには、総飛行時間1,000時間を超えるパイロットが多数在籍しており、安全面での心配はご無用です。赤外線診断の資格を取得した専門の担当が自社スタッフにおりますので、外壁タイルの異常を見逃すといったこともありません。また、調査後の分析・報告書作成までご依頼いただくことができます。一級建築士事務所と業務提携し精度の高い報告書を納品させていただきます。
日本全国どこでもドローンの飛行許可を取得できるため、都市部でも問題なくドローンによる赤外線調査を行えます。外壁の定期調査へのドローン導入をご検討の方は、是非一度ドローンフロンティアにご相談ください。

