国土交通省の発表によると2023年末時点での全国のストックマンションは約704.3万戸となっています。そのうち築40年を超えるマンションは約136.9万戸に上り、総数の約19.4%を占めています。
しかし、これら経年劣化が進むマンション・ビルの多くの外壁はタイルで構成されているため、劣化が放置されると剥落し、最悪の場合、人身事故を引き起こす可能性があります。実際に毎年、タイル剥落による事故が報告されています。
ストックマンション数は今後10年で約2.0倍、20年で約3.4倍に増加すると予測されています。築年数が経過しているマンションに対する適切なメンテナンスは喫緊の課題となっているのです。
タイル剥落で死亡事故も
マンションの外壁タイルは、年月とともに劣化することは避けられません。劣化によってタイルの貼り付けに不具合が発生していた場合、落下した外壁タイルが周辺の器物に損傷を与えてしまいかねません。また、住人や歩行者に危害を及ぼす恐れもあります。実際、死亡事故に至った例もあります。そのため外壁タイルは定期的な点検やメンテナンスが必要です。
12条点検による報告義務化のきっかけとなったタイル落下死亡事故
2008年4月1日に施行された建築基準法施行規則の改正によって、マンションやビルなど特定建築物といわれる建物では、竣工あるいは外壁改修工事から10年を経過した時に外壁の全面調査を実施して、その結果を建築主事を置く地方公共団体、およびその長である特定行政庁に報告するという義務が課せられています。
この改正のきっかけとなったのが1989年11月、北九州市で発生した死亡事故でした。この事故では外壁の躯体と、縦約5m、横約8m、厚さ約3.5cmのタイル下地モルタルが剥落。31m下の歩道上の通行人の上に落下し、71歳の男性と68歳の女性が死亡。42歳の女性が負傷されました。
この死亡事故の後は現在まで、各地で発生したタイル落下事故のうち、国土交通省が特定行政庁から報告を受けたものの中に死者が出たものは見受けられません。しかし負傷された方がいる事故は毎年発生しています。
外壁タイルの剥落、その責任は?
外壁タイルが落下し、住人や歩行者が負傷してしまったり、万が一、そのタイル落下が原因で死亡事故になってしまうようなことがあったり、あるいは器物を破損させてしまうような事故が発生した場合、その損害賠償責任は建物所有者が負うことになります。これは民法第717条で定められています。
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任) 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。(出典:民法第717条)
タイル落下の事故による万が一を発生させないために
外壁タイルの経年劣化の発生を止めることはできません。しかし、劣化によってタイルが剥がれ、落下してしまい、死亡事故のような、あってはならないことが起きないようにするためにはわずかな変化も見逃さないよう、定期的な点検が必要になります。また、目視で外壁タイルに異常を発見した際には全体点検の実施を検討すべきです。
タイル剥落寸前!?危険な状況とは?
【危険症状】
- ひび割れ
- 目地材に隙間がある
- エフロレッセンス(白華現象)
ひび割れはタイルが浮き始めている可能性が、目地材の隙間はタイルが動いている可能性があります。また、エフロレッセンスと呼ばれる白いシミのような汚れがある場合、雨水の浸透性が高くなっており、落下の原因となることもあります。
外壁タイルの剥落事故を防ぐためには、剥落する前に劣化を発見しなければいけません。
2008年の建築基準法施工規則の一部改正により、竣工後10年以上経過した建物は全面打診調査が義務付けられました。しかし、これでもなお剥落事故は発生しています。
タイルが剥落する理由
タイルが剥落してしまう理由を見ていきましょう。
①外壁の部材は伸縮量が異なるため
外壁は、タイル・接着モルタル・コンクリートの3層から成っています。
これらの材料は外部からの温湿度変化によって伸縮しますが、それぞれ材質が異なるためその伸縮に差ができてしまうのです。
それぞれの異なった伸縮は年数が経つにつれてタイルの浮きを発生させてしまいます。
②タイルが浮いた部分に雨水が侵入するため
タイルに浮きが発生すると、その部分に雨水が侵入します。温湿度変化は日々起こるので、膨張と収縮によってタイルの浮きが悪化し続け、結果剥離してしまうことになるのです。
外壁定期点検の義務
北九州で1989年に発生したタイル落下による死亡事故を契機に建築基準法の改正が検討され始めました。その結果、2008年、建築物の定期報告制度において、タイル等の外壁の仕上げの劣化状況を確認するための調査について改正が行われ、10年ごとに外壁の全面打診等調査が義務化されました。
10年ごとに全面打診等調査を
10年ごとに外壁の全面打診等調査を行わなければならないのはタイル(湿式)仕上げ、石貼り(湿式)仕上げ、モルタル仕上げの外壁です。
調査の対象となるのは特に落下によって歩行者などに危害を加える可能性のある部分で、外壁面の前面かつその高さの約半分の範囲で、公道や通行者の多いエリアを有するものとされています。
ただし、外壁直下に屋根や庇が設置されている場合や、植え込みにより安全が確保されている場合は除外されます。
調査方法はテストハンマーやドローンによる赤外線調査で
全面打診などを行う際の調査方法としては、テストハンマーによる全面打診調査やドローンによる赤外線調査が採用されています。これにより、ひび割れや浮き、はがれなどの劣化・損傷が見受けられた場合は、一時的な被害防止策として、剥落防止ネットやバリケードなどの設置が必要です。
改修が必要な場合は、迅速かつ適切な対策を講じるよう呼びかけられています。
マンション・ビルの外壁タイルの点検で注目されるドローン赤外線調査
1989年に発生した、タイル落下による痛ましい死亡事故を契機に、建物の老朽化を原因とする事故を未然に防ぐことを目的とし、2008年に「建築基準法第12条」に基づく「定期報告制度」が改訂されました。以降、定期的な外壁調査と報告は建物の所有者、管理者の義務となったのです。具体的には目視と手の届く範囲の打診、異常が見られた場合は外壁の全面調査が必要になるのですが、赤外線調査はこの全面調査で選定できる調査方法のひとつ。赤外線で点検した記録はエビデンスを持ったデータとして提出することができます。
赤外線外壁調査の仕組みとは?
外壁で劣化を起こした箇所と健全な箇所では表面温度に違いがみられます。赤外線はこの温度差から外壁の劣化箇所をピンポイントで特定します。たとえば外装仕上げ材のタイルが浮いている箇所は熱をこもらせていますし、水漏れを起こしている箇所は水分の蒸発時、周囲の熱を奪う特徴を持っています。ドローンによる赤外線調査は外壁の温度を熱画像として可視化させ、調査員が解析を行う調査方法です。
ドローンによる赤外線外壁調査には建設業の知識も含めた総合力で
ドローンによる赤外線外壁調査は国に認められた技術であるものの、国家資格は存在しません。ご依頼される会社の力量によって調査結果が大きく左右されます。ドローンの操作技術や知識は大前提。その上で、解析可能なデータを取る、精度の高い解析を実現することは調査員の経験に依る部分が大きいのです。また、クライアントの方と話を進める上で、調査員には建設業の知識も求められています。ドローンフロンティアの調査員は「赤外線建物診断技能士」の資格も保有しております。
ドローンフロンティアの赤外線外壁調査
ドローンを用いて赤外線外壁調査の業務を行う多くの会社は、撮影のみ自社で行い、解析を他社に委託しているケースが多く見られます。しかしドローンフロンティアはドローンを用いた赤外線外壁調査の撮影から解析までの全業務を内製化しています。
ドローン赤外線撮影と解析を内製化
ドローンを用いて赤外線外壁調査の業務を行う多くの会社は、撮影のみ自社で行い、解析を他社に委託しているケースが多いですが、弊社はドローンを用いた赤外線外壁調査の撮影から解析までの全業務を内製化しています。
内製化していることのメリットとして以下の2点が挙げられます。
①急な天候の変化に対応できるため環境要件が適した日に調査を実施し易い
②撮影班と解析班で意思の統一が図れているため、解析班が求めるデータ取得を現場で実行し易い
また、ドローンフロンティアでは赤外線外壁調査だけでなく打診調査も承ることが可能です。そのため現場状況にあわせて最適な調査手法を選択できます。
見積もりと実際の施工費用との差が出にくい
外壁修繕では見積りと実際の施工費用に差が発生しトラブルになることがあります。
これは外壁調査の精度が低く、不具合のある箇所を見落としてしまったことが原因です。
他社の調査をもとに修繕を進めたところ、施工時に想定以上に不具合が見つかり、当初の見積もりと比べて実際の施工費用が1,000万円程高くなってしまったというケースもあります。
調査精度の高い会社に依頼をすることは、実際に施工する際のトラブル回避にも繋がります。
サービス料金:200円〜480円(調査面積1㎡あたり・税別)
ドローンのみを使用した場合の調査撮影・画像分析報告書の作成にかかる料金です。調査面積によって1㎡あたりの価格が変動いたします。調査実施調整費、機材車両費、現場管理費、諸経費を別途申し受けます。
また、ロープアクセス調査を使用する場合は1㎡あたり400〜600円(税別)、機材車両費、現場管理費、諸経費を別途申し受けます。
詳しくはこちらもご覧ください。