赤外線調査

ドローンによる外壁の赤外線調査でコストが1/10に

投稿日:2021年4月30日 更新日:

東京・足立区を拠点に日本全国対応にてドローンソリューションサービスを提供しているドローンフロンティアです。
今回は、先日弊社が承った外壁の赤外線調査の事例をご紹介します。
お客様のご依頼の目的は「大規模修繕」に用いる資料作成。
13階建て、約2万平米のマンションの損傷箇所を可視化し、データにまとめることが今回の弊社の業務なのですが特筆すべき点は、マンションの立地条件から形状までもが複雑だったことにあります。

お客様がドローンでの赤外線調査を依頼するに至った理由

外壁調査は「打診」が一般的に行われる手法です。
読んで字のごとく、外壁を叩いた時の反響音から補修が必要な箇所を調査する方法となります。

調査員が高所の外壁で打診調査を行うためには、仮設足場を組む必要があります。
今回のお客様も仮設足場の見積りを取られたそうなのですが、費用が想定より高額だったため仮設足場を組まずに外壁調査を行う手法を検討されました。
そこで、次の案として浮上したのは作業員が屋上から垂らしたロープに吊るされながら調査・補修を行うロープアクセスです。
ロープアクセスは、足場を組まなくとも比較的短納期で調査が可能なことと、足場が組めないような環境でも外壁調査を行いやすいことが魅力です。
ただ、今回のマンションの屋上は屋根の構造上ロープの設置が困難なことや屋根材に洋瓦を使用しており建物を損傷させるリスクもあることから、ロープアクセスによる外壁調査も断念されました。

お見積りを出させて頂いたところ仮設足場を設置しての外壁調査費用と比較すると約1/10のコストだったようで、即決をしていただきました。
また、実際の外壁の調査自体も2日まで短縮することができました。
足場を用いる場合、調査箇所ごとに足場の組み立て・解体の作業が加わるため、少なくとも2〜3週間の調査期間が必要とされています。

そして、ロープアクセスの相談を受けられた会社様から弊社に『ドローンによる赤外線調査で対応できないか』とお声がけをいただきました。

外壁調査の手法別サービス料金比較

手法別費用比較

今回はドローン、ゴンドラ、ロープアクセス、仮設足場の4つの手法の外壁調査に掛かる費用を比較しました。

ドローンの費用を1とすると、
ロープアクセスは2.5
ゴンドラ3
仮設足場は8
という費用目安となります。

つまりドローンによる外壁調査が50万円の現場だと
ロープアクセス125万円
ゴンドラ150万円
仮設足場400万円となります。

コスト面から見ると圧倒的にドローンに軍配が上がります。

外壁調査の手法はシーンによって最適解が異なる

費用的にはドローンが最も安いことが分かりましたが案件によってはそれ以外の方法をオススメすることもあります。
その一つが、『すでに大規模修繕をすることが決まっている場合』です。

大規模修繕を全面的に行う場合は、足場があった方が作業性は高くなります。
そのため、調査段階から足場を組むことをオススメしています。

逆にピンポイントで部分補修することを見越した調査であれば
ロープアクセスを利用するのがいいでしょう。

それ以外のとりあえず一度外壁調査を行うというシーンでは、
ドローンによる調査を行うことをオススメします。

ここからはドローンによる赤外線調査はどのようなものか解説していきます。

赤外線調査はデータ量と多方面からのデータ分析でその精度が大きく左右される

今回のマンションは、真上から見ると概ね「十字」のようになっており、陰になる部分も多くとても複雑な構造でした。

ドローン外壁調査は温度(物体が持つ赤外線のエネルギー)を目に見えるようにする「赤外線カメラ」と目視点検の代わりとして被写体をそのままを写す「可視カメラ」で撮影した2種類の写真をもとに外壁の状態を判断していく手法です。
特に赤外線外壁調査は外壁の正常箇所と異常箇所との温度差を発生させるため日照が不可欠になるのですが、今回の建物は構造上どうしても赤外線調査に適した日照が確保できない部分が多くなり、赤外線調査の精度が発揮されないリスクが考えられました。

通常はロープアクセスをはじめとした打診調査などと併用することで赤外線調査に不適な箇所の解析を補完していくことになるのですが、今回はロープアクセスによる打診調査を行うことはできません。夜間に赤外線調査を行うという手法もあるのですがマンション付近でドローンを夜間に飛行させることは騒音発生の観点からも現実的ではないといえます。

タイルが「ひび割れ」「剥落」を起こしている箇所は可視カメラで判別することが出来ますが、「剥離(浮き)」といったタイル内側の劣化症状は、赤外線カメラを用い、温度差から判断します。

今回の調査には高い精度を実現できない可能性がある部分が多かったことから、”潜在的な劣化”を洗い出すこと、赤外線調査のデータを「裏づけする根拠」を収集することを求められていました。
赤外線カメラの情報だけで判断するのではなく、可視カメラの情報を照らし合わせるのはもちろんのこと、手の届く範囲で打診を行う、過去の類似した調査物件の膨大な画像解析データや打診調査結果による傾向性、気象データを用いて、劣化症状の理論的な分析を徹底する方針を取りました。

結果、画像解析の元データとなる今回の物件の写真撮影枚数は計3万枚にのぼり、調査・飛行担当兼任も含めて計5名のチームによって解析は約1か月間、念入りに進められていきました。

1,100枚に及ぶ提出資料の1ページ1ページに配慮が詰まっている

外壁調査・データ解析を行った結果、1,100ページに及ぶ資料を報告書としてお客様に提出することになりました。

資料には「この建物のこの位置がこのように劣化している」という情報だけではなく、修繕の見積に必要な劣化の数量も詳細に記載しています。
今回のように大規模なマンションでも、参照したい箇所の状況がすぐに把握できると修繕の施工会社とお客様との間でお互いに状況を説明しやすくなりますし、修繕工事を行う際も円滑な工事計画を立てることができます。

また、円滑な工事計画と施工には修繕費用の見積りの正確性も大きく左右します。調査結果の資料が杜撰で、見積りと外壁の実態が大きく乖離しており施工前後のトラブルに繋がってしまうということがないように、調査・データ分析の正確性に加え、資料の分かりやすさにもとても注意を払っております。

膨大な検証結果がもたらした赤外線調査の独自ノウハウ

ドローンによる赤外線調査は、利便性が高く、コストや調査期間を抑えるメリットに目がいきがちですが、そのデータを元に解析するノウハウと高精度を実現するために裏付けされたデータが伴って初めて価値のある調査手法といえます。

業界にはデータ解析はせず撮影のみ担当する会社もありますが、弊社はドローンでの撮影からデータ解析まで一貫して自社で行ってきました。そのため、物件の条件毎にどのように撮影、解析すれば正解により近い資料を作成できるのか膨大な検証結果を有しております。
仮設足場やその他の手法での外壁調査が困難だったり、見積り金額が予算をオーバーしてしまっている場合は是非ドローンによる赤外線調査を検討してみませんか。

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