ドローンの操縦士免許はこれまで民間資格のみでした。しかし、国が物流や災害時などにドローンを活用するための法整備が進められており、現在は「無人航空機の操縦者技能証明制度(操縦ライセンス制度)」という国家資格もあります。
ドローンの活用はさらに進んでおり、建築・リフォーム業界においてもドローンによる調査は一般的になりつつあります。屋根点検にドローンを導入すると業務効率向上、職人でなくともしっかりと点検できるなどの恩恵がいくつもありますが、ドローンの理解が浅く、なかなか導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか。
この記事では屋根点検でドローンを活用する場合のメリット、デメリットから現場に導入するために必要なことまでを紹介します。

Unmanned Aircraft System (UAV) Quadcopter Drone In The Air Over House Inspecting the Roof.
ドローンによる屋根点検のメリット
ドローンを屋根点検に導入する最大のメリットは業務効率の改善です。一つずつ詳細に解説していきましょう。
ドローンの導入で屋根点検の時間を大幅に短縮できる
ドローンの空撮による屋根点検は、慣れてくると、従来の屋根に登って点検を行う場合と比較して、約半分程度の時間で行うことができます。
- ドローン空撮による屋根点検:20〜30分/軒
- 屋根に登っての点検:40〜60分/軒
ドローンの空撮による屋根点検は業務効率が向上するので、売上げの増加に寄与するといえます。
誰でも点検できるように
これまでは屋根に登れる職人しか行えなかった屋根点検。ドローンを導入することで、職人以外のスタッフでも点検を行えるようになります。ドローンの空撮による点検を導入したタイミングで、点検担当者を、接客が得意な女性スタッフに切り替えたことで、サービス品質が向上した会社もあります。
近隣住民から注目も!新規受注のチャンスが
屋根点検を行う際、近隣にお知らせを兼ねてご挨拶にうかがうのが通例です。ドローンによる空撮実施を説明すると、興味を持っていただけることが少なくありません。営業の機会が増えたという声も多数いただいております。ドローンによる空撮、屋根点検を行う際、建物の前には国土交通省の飛行許可を取得している旨の看板を設置し、作業者だとわかるようにヘルメットや蛍光ベストなどを着ているため、安心感・信頼感を与えられるだけでなく、興味を持たれた方と会話になりやすいというメリットもあるのです。
ドローンで屋根面積の計測も可能に
ドローンは屋根面積の計算にも利用できます。従来、屋根面積の計算には屋根に登り、直接計測を行うのが一般的でした。しかし、屋根の経年劣化が進んでいた場合、屋根に上がるのも容易ではありません。そうした状況を背景に弊社ではドローンで撮影した画像を利用して、容易に屋根の寸法計測などを可能にした屋根面積の積算アプリ「屋根はかる君」を開発・販売しています。「屋根はかる君」は屋根の面積計算や勾配角度の自動計算だけに機能を絞っていることから、誰もが使いやすく、価格も従来の積算アプリの10分の1程度と、リーズナブルです。
屋根はかる君はドローンで撮影した写真で面積計算が可能
「屋根はかる君」は一般的なドローンが撮影した写真1枚で屋根の面積計算が可能なアプリです。使い方は難しくありません。スマホやタブレットに「屋根はかる君」をインストールして、物件を登録。ドローンで撮影した、計測対象となる建物の屋根画像を開いて、実測した箇所に線を引きます。ここに実測値を与えることで、他の場所で線を引くと屋根面積を算出してくれます。
また「屋根はかる君」の「屋根勾配算出機能」は写真1枚で屋根勾配角度を自動計算してくれます。屋根を横から俯瞰できる写真を1枚撮影し、アプリで勾配がついている部分に線を引くと、勾配を自動計算し、表示してくれます。度と寸の単位表示を切り替えることも可能です。
屋根の調査所要時間の短縮も
「屋根はかる君」は計測担当者が屋根に登る必要がないため、落下事故や屋根の破損といったトラブルの心配はなく、加えて現場での調査所要時間を3分の1ほどに短縮できます。現場調査の際、家主や、工事を担当する作業員や職人に同席してもらう必要がないため、日程調整の手間も削減できます。「屋根はかる君」には屋根の破損箇所などのメモに使えるスタンプ機能もあります。
ドローン導入、課題の解決は補助金などの活用で
ドローンによる屋根点検事業の参入にはドローン購入やパイロットの育成費用などの初期費用が発生します。こうした課題の解決には国や地方自治体の補助金の活用を検討しましょう。
ドローンのパイロット育成、いくらかかる?
国土交通省の登録講習機関である弊社ドローンフロンティアの例をご紹介しましょう。弊社はUAS技能教習所東京校(UST東京校)を運営しており、無人航空機操縦者技能認証書(国家資格)と民間操縦ライセンスの講習が可能です。
一等、二等無人航空機操縦士取得を目指す「国家資格取得コース」、屋根点検や12条点検のための外壁調査を行うための実践的な技術を習得する「産業技能コース」のほか、ドローンについて座学で学ぶ「オンライン安全教育講習」といったカリキュラムを用意しています。
スタンダードコース(2日実施):16万円(税抜)/名
ドローン未経験者向けのコースです。ドローンの基本操作と座学知識を「関連法令」「ドローン機体構造」「現場での安全管理方法」の3つの柱に沿って学びます。ドローン未経験者の方に最初にご案内するコースとなります。
※特定の目的に特化した専門的なカリキュラムではございません。
※座学は弊社独自Eラーニング「UST Remote」にて事前にご受講いただきます。
屋根点検コース(3日実施):22万円(税抜)/名
ドローンで戸建ての屋根点検を行いたい事業者様向けのコースです。スタンダードコース(2日間)と屋根点検現場実習(1日間)がパッケージとなった3日間のコースとなり、屋根をドローンで調査する方法を講師と共に実際の戸建て物件で学びます。住宅地でのドローン飛行は練習場とは異なり障害物も多く操縦者に技量が求められます。本コースの受講により講習後スムーズに屋根点検業務を行えるようになります。 また「屋根はかる君」を活用した屋根寸法の計測業務にも対応しています。
赤外線外壁調査コース(2日実施):22万円(税抜)/名
ドローンを利用して赤外線外壁調査の手法を学ぶコースです。ドローンによる赤外線調査は建築基準法に定められる特定建築物の法定点検の外壁全面調査に対応することが出来ます。 本講習では「建築基準法」「赤外線・熱力学の基礎」「外壁に生じる劣化症状」「ドローン赤外線カメラによる外壁の撮影方法」「赤外線画像解析」などについて学んでいきます。
※カリキュラムは「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査 ガイドライン」に準拠しております。
このほか、「国家資格取得コース」「空撮コース」「カスタムコース・現場OJT」などについては弊社ウェブサイトの講習紹介ページをご覧ください。
ドローンフロンティア ドローンスクール紹介のぺージはこちらから
ドローンの導入のための補助金は?
ドローン導入に際しては国による補助金の利用を検討しましょう。現在、募集が行われている、行われる予定となっているものでは経済産業省が提供する補助金の「事業再構築補助金」、中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」、「中小企業省力化投資補助金」がドローンの導入に利用できる可能性があります。
またドローンパイロットの育成には厚生労働省の補助金、「人材開発支援助成金」を利用できるでしょう。
事業再構築補助金ウエブサイト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
中小企業庁「令和6年度補正予算 ものづくり補助金」案内
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/2025/250217kobo.html
中小企業省力化投資補助金 一般型
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/
人材開発支援助成金(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
ドローンの国家資格を取得している場合のメリット

ドローン国家資格
ドローンの操縦は民間による認定に加えて、2022年12月より国家資格化されています。民間資格のみでもこれまで通り手続きを行うことでドローンを飛ばすことは出来ますが、国家資格ならではのメリットもあります。ドローンの国家資格は2種類あり、ドローンの用途が屋根点検などの建設業の場合は二等無人航空機操縦士を取得すれば問題ありません。二等無人航空機操縦士を取得するメリットは主に2つです。
ドローン操縦資格を持っていることで得られる信頼感
ドローンの国家資格のための試験は難易度が高いとされています。そのため、屋根点検を発注する側の視点で考えると、ドローンに関して高い知識と技術力を持っているという証明になります。屋根点検を依頼する側からすると、ドローン調査における知見と高い操縦技術を持つ、有資格者に調査してもらいたいと考えるのはいうまでもありません。ドローンの操縦資格を取得することは、競合他社との差別化における強みとなるに違いありません。
ドローン操縦の有国家資格者は年に一度の包括申請が不要
包括申請とは複数の場所でドローンを飛ばす場合の許可を、有効期限最大1年間で取得できる申請方法です。屋根点検の場合、この包括申請を年に一度行えば飛行が可能でした。
2022年12月の国家資格制度がスタートしてからは有資格者が機体認証制度をパスしている機体を使う場合には、包括申請を行う必要がなく、ほとんどの場合、ドローンの飛行許可申請不要で飛ばすことができるようになっています。
屋根点検にオススメのドローン

DJI Air 3S :190,000円(税抜)
現行の機体の中で屋根点検に適しているものは主に3機種あります。(2025年4月1日時点)
- DJI Mini 4 Proフライモアコンボ: 143,800円
- DJI Air 3Sフライモアコンボ: 190,000円
- DJI Mavic 3 Proフライモアコンボ: 450,000円
価格に比例して性能も上がります。
この3機種の中で弊社では「DJI Air 3S」をオススメしています。このモデルは屋根点検に必要な性能を満たせているだけでなく、価格も抑えられています。
- 性能が高い
- 光学3倍ズームが可能
- 大きさがちょうど良い
- 金額が手頃
- 新しい機体なので備品の補充が容易(古い機体は備品が手に入らないこともある)
- 素人でも操縦しやすく、安定した飛行が可能
と、屋根点検の現場との相性が非常に良いモデルです。「DJI Air 3S」の主な機能についてはメーカーのウェブサイトをご覧ください。
「DJI Air 3S」は弊社でもお取り扱いしております。お気軽にお問合せください。
屋根点検へのドローン導入、まずはご相談ください
簡単な写真撮影・動画撮影を想定しているのか、ハウスメーカー・リフォーム業・塗装業などを営んでいて、戸建ての各部点検・計測を行いたいのか、あるいは12条点検や大規模修繕など特定建築物などで外壁点検を行いたいのかなど、業務にドローンを取り入れる際のニーズはさまざまでしょう。あるいは赤外線外壁調査・ソーラーパネル点検・空撮などのように、難易度が高い飛行を行いたいというニーズを持っておられるかもしれません。
屋根点検にドローンの導入を検討したい、とお考えの場合、弊社ドローンフロンティアにご相談ください。弊社運営のドローンスクールは資格取得から、すでに資格を保有されている方の操縦スキル向上まで、対応することが可能です。