東京を拠点に、日本全国に対応したドローンソリューションサービスを提供するドローンフロンティアです。
ドローン技術の需要は年々増加していますが、それに伴い航空法の整備も急務となっています。国土交通省は2015年度より数回にわたり無人航空機に関する取組を公表してきましたが、この度新たに「空の産業革命に向けたロードマップ2021」として、より実践的なドローンの活用に向けたビジョンをとりまとめました。
一環として、2021年度6月に大規模な航空法改正があり、2022年度にはいよいよドローン操縦が国家資格化されることになりました。このことによりドローンを取り巻く環境が大きく改善されることが予想されています。
今回のコラムでは、ドローン操縦の免許制導入によりドローン業界がどのように変わるのか、そして建設業にはどのような影響があるのか、この2点を中心にお話を進めていきたいと思います。
ドローン操縦がいよいよ国家資格化!経緯や背景は?
かつては新しい技術として取り上げられていたドローンですが、昨今では幅広い業界で導入が進み、様々な形で広く活用されるようになってきました。とりわけ運送業においては、慢性的な人手不足やネットショッピングの増加などに対応するためドローン活用のニーズが高まっていますが、法的な規制が多く、未だ本格的な導入が発展途上にあることは否めません。
ドローン飛行は、現在のところ有人地帯上空での目視外飛行(以下、レベル4とします)が禁止されています。レベル4が許可されない理由は、以下の観点からになります。
【墜落を誘発するリスク】
1.機体の信頼性不足による墜落のリスク
2.運航者(操縦者)の技量不足に起因するリスク
3.整備不良に起因するリスク
4.ドローンの技術の未成熟に起因するリスク
【プライバシー侵害のリスク】
操縦者の質の担保のための制度の導入であって、免許制だけでは操縦者を特定できるものではありません。それの裏付けとして、免許制がスタートした後も従来通りの飛行申請を行えば、免許を保有していなくとも規制エリアで飛行できます。
以上、これら4つの観点から、ドローンの需要が高まっているにも関わらず、しばらくは航空法によって定められている目視外の飛行可能範囲が「無人地帯」のみでした。しかし、これでは運送業を始め、各業界におけるドローン活用に限界が生じてしまいます。ドローンの技術が進み、確実に需要がある。しかし、法整備だけが追いついていない……。このような状況を改善すべく満を持して航空法の改正となり、その一環としてドローン操縦が国家資格化されることになったのです。
国土交通省による無人航空機(ドローン)の飛行の環境整備とは?
国土交通省航空局が2021年12月に発表した「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」によると、無人航空機(ドローン)の飛行の環境整備の骨子は以下のようになっています。
・無人航空機の飛行の安全を確保し、その利活用拡大を図るため、航空法では、無人航空機の飛行の許可・承認制度(平成27年改正)、登録制度(令和2年改正)など、段階的に環境整備を進めている。
・ドローンに関する技術の向上、物流等の利活用へのニーズが高まっている中、2022年度を目途に、現行では飛行を認めていない「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)を実現すべく、交通政策審議会等において検討を行ってきたところ。
そして、ここからさらに整備は進み、現行では飛行を認めていない「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)が、2022年12月を目処にいよいよ実現される方向になりました。ドローンの飛行レベルは4段階に分かれていて、現在ではレベル3までの飛行が認められていますが、今回の改正により最終レベルに到達となるわけです。
【ドローンの飛行レベル】
レベル1:目視内での操縦飛行
レベル2:目視内での自動/自律飛行
レベル3:無人地帯における目視外飛行
レベル4:有人地帯における目視外飛行
レベル4が認められるようになると、運送業における活用が本格化され、物流のあり方が大きく変わることが予想されます。まず、離島や山間部等への物資輸送におけるアクセスの向上を目指し、それから徐々に都市部に対しても適応範囲を拡大させていくことによって、持続可能な事業形態としてドローン物流が実装されることになります。近い将来、日常的に複数のドローンが空を飛び回るようになるかもしれませんね。
参照:国土交通省航空局、「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
参照:内閣官房小型無人機等対策推進室、「空の産業革命に向けたロードマップ2021」
ドローン操縦の国家資格化により情報管理が徹底される
レベル4の実現に伴いドローン操縦が国家資格化されると、ドローンを取り巻く様々な情報が管理されることになります。これまでの飛行申請でも、
・何を飛ばすか(機体)
・誰が飛ばすか(操縦者)
・どのように飛ばすか(目的)
・どんな環境で飛ばすか(場所)
これらを明確にする必要がありましたが、申請に求められる情報は決して厳密なものではありませんでした。例えば操縦者が自分自身の技能について申告する際に、スクールで訓練を受けた以上の飛行技能を自己申告してしまう人もいるなど、申告内容の信ぴょう性に欠けるといった点が問題としてありました。他にも、認定スクールごとに指導レベルの差が大きく、操縦者の技能にばらつきがある点も問題でした。このように、操縦者の質の管理が十分にできているとは決して言えなかったのです。
しかし、今回の航空法改正では、新たに解禁されるレベル4などの第三者上空での飛行を行う場合について「①機体認証を受けた機体を、②操縦ライセンスを有する者が操縦し、③国土交通大臣の許可・承認(運航管理の方法等を確認)を受けた場合に、可能とする」と明記しています。
詳しく説明すると、2022年6月からはドローンの機体登録が義務化され、重さ100グラム以上の機体を対象に、所有者は氏名や住所、機体情報を国に届け出て、機体に登録番号を表示することが必要になります。そして、機体認証を受けたドローンを、国の試験をクリアしたライセンス所有者が操縦し、国土交通大臣の許可・承認を受けることによって、第三者上空での飛行(レベル4が該当)が可能になるということです。 また、事故防止や状況把握のため、ドローンの飛行計画の通報や飛行日誌の記録、事故発生時の報告などを義務化し、運航管理のルール等を明確化していきます。
機体の安全性に関する認証制度(機体認証)と、操縦者の技能に関する証明制度(操縦ライセンス) が新たに創設されるので、航空法改正後にはより安全性の高い飛行が確保されるでしょう。
ドローン操縦が免許制に!
いよいよドローン操縦に免許制が適用されることになりますが、その内容について具体的に予定されているものをいくつかご紹介します。
・試験は学科と実技の両方があります。
・一等資格(第三者上空飛行に対応)及び二等資格に区分され、機体の種類(固定翼、回転翼等)や飛行方法(目視外飛行、夜間飛行等)に応じて限定が付けられます。第三者上空飛行つまりレベル4の飛行には、一等資格が必要です。
・国の指定を受けた民間試験機関による試験事務の実施が可能です。また、国の登録を受けた民間講習機関が実施する講習を修了した場合は、試験の一部又は全部が免除されます。
・ドローンの免許を取得できるのは16歳以上です。そして、ドローンの免許は運転免許と同様、取得したらずっと有効なわけではなく、3年ごとに更新が必要となる予定です。
国家資格導入後のドローンを取り巻く環境の変化は?
ドローンを取り巻く向こう数年の環境の変化は、内閣官房小型無人機等対策推進室がとりまとめた、「空の産業革命に向けたロードマップ2021」で全貌を見ることができます。「環境整備」「技術開発」「社会実装」の3つの側面からアプローチし、まさに空の産業革命の名に相応しい大掛かりな計画になっています。
参照:内閣官房小型無人機等対策推進室、「空の産業革命に向けたロードマップ2021」
建設業における影響
ドローン技術は建設業においても調査や点検などで既に広く活用されています。2022年度12月にはドローンが国家資格化されますが、ドローンの免許制によって建設業にはどのような影響が考えられるでしょうか。
今回の改正の最大の要点は、免許制の導入とレベル4の飛行が可能になることです。免許制の影響については、二等資格(レベル4以外の飛行が可能、外壁調査など建設業の利用では主にこちらが適用)の取得によって、申請不要でドローン飛行ができるようになるというメリットがあります。詳しく申し上げると、「二等資格+機体認証を受けた機体+現行法の包括で飛行できる内容」は申請不要ということです。また、レベル4の飛行に関してですが、外壁の赤外線調査や屋根点検などが大部分を占める建設業での利用に限ってはレベル4が直接的に関係してくるわけではないので、当面の間はそこまでの大きな影響はないと思われます。
ただ、免許制が導入されることも含め、ドローンを取り巻く環境が大きく改善されることによって、ドローン技術に対する認知度が広まることは確かです。今後ドローンは一般の方にとってより身近なものになるでしょう。
これまでは、ドローン技術について情報が少ないがゆえに、ドローンによる外壁調査屋根点検に抵抗があった方いるかもしれません。しかし、信頼に値する優れた技術であることが証明され、実用面でもその効用が明らかになってくると、外壁調査や屋根点検の方法の選択肢の一つとして一般的になるかもしれません。
近い将来、建設業におけるドローン活用が当たり前になる可能性があるので、まだドローンを導入していない業者の皆さまは、是非検討してみてはいかがでしょうか。